それなりに桑田真澄の“現役引退”はインパクトがあった。
「フリーの身になれば、あれだけ名前が売れている男だから、当分の間は引く手あまたでしょう。同時に、今後どうするのか、と誰もが関心を持っていると思いますね」(広告代理店幹部)
桑田が引退を告白したのは特定のテレビ番組を使ってだった。
「ボールを置く」。例によってキザなセリフを吐いた。米国での会見では「燃え尽きた」「野球の神様に感謝したい」など、おなじみのフレーズを並べ立てていた。
米在住のジャーナリストは桑田のしたたかさに舌を巻く。「簡単に言えば、桑田はパイレーツから“野球を辞めろ”と通告されたんですよ。それをパイレーツから発表されると、イメージダウンになるので自分の口から現役引退を日本のテレビを通じて言った。行き場がないのを一流選手のみが使える“現役引退”にすり替えたということです」
つまり、帰国してからの就職を考えての桑田流対応だった、というわけである。
その桑田に「来シーズンから巨人監督」の情報が流れている。事情通が語る。「桑田巨人監督の話は半年ぐらい前から出始めました。昨シーズン途中、パイレーツを解雇された後に巨人の幹部と会い、そこで監督の話が出たようです。原監督をすぐ切るわけにはいかないので、1年勉強してくれ、と言われたと聞いています」
巨人は昨年、セ・リーグで優勝しながら日本シリーズに出場できなかったことで、大変な敗北感を味わっている。幹部会では、原監督では大勝負に勝てない、との結論に達したようだ。
「桑田の勝負強さは誰もが認めるところです。長嶋監督時代、ここ一番では必ず桑田を使った。それで何度か勝った。その点、原は現役時代からチャンスに弱く、勝負に関係のない場面でホームランをよく打ち、ファンをシラけさせていた。それを巨人はよく知っています」(ベテラン記者)
気になるのは、桑田は巨人を飛び出たのではないか、という点である。確かに桑田は原監督から戦力外扱いされ、それが負けじ魂に火をつけ大リーグ挑戦につながった。しかし、球団は桑田と切れてはいない。
「確か、巨人と桑田の間には、生涯に渡って読売グループで面倒を見る、というオプションがあると聞いていますよ。なにしろ桑田は早大受験を蹴って巨人入りした経緯があるから、かなり中身の濃い契約をしているのではないか」(大物評論家)
桑田はしゃべりも原より数段上。巨人と関係の深いメディアももろ手を挙げて“桑田監督”に賛成のようである。桑田は野球理論も卓越したものがあり、指導者としての期待は巨人OBの一部にもある。帰国後の桑田に注目が集まるのは間違いない。