「FAですよ」
ひと言で、そう理由を指摘するのはスポーツ紙デスク。ん? と首を傾けるのは巨人ファンではないからだろう。阿部は来年、国内でのFA権を取得する。
「FA宣言される前に先手を打ったんです。球界の常識から、(FAで)ほかの球団に行けば間違いなく年俸は上がる。ライバル球団に移籍されでもしたら、戦力ダウンどころですまないからです」(同)
捕手は守備の要。横浜・野口の阪神へのFA移籍が、ちょっとした話題になっているように、たとえ控えでもチームを離脱されると痛い。
年俸がシーズンの成績と離れたところで査定される例を挙げたが、これはチーム事情が絡んでいる。
選手のプライベートが左右することがある。球界OBの話。
「(年俸を)下げれば冷たい目で見られがちだが、温情をかけてくれることも結構あるんだ。そのいい例が結婚。選手はシーズンオフに挙式するのが普通で、そのときは成績に関係なく年俸は上がる。扶養家族が増えるのを機会に頑張ってくれ、という親心。これは各球団共通、球界の不文律といってもいい」
対照的に必ずといっていいほどダウンする理由もある。監督やコーチ批判だ。シーズン中なら罰金の対象になるが、それだけでは終わらない。
「間違いなく、ダウンさせられる。トレードされることもある。球団に残れれば、まだいい方かもしれない」(前出・OB)