しかし話を聞いていると彼女は根本的にパチンコの知識が欠けていることが判明した。というか完全なオカルト信者。「サムで5連以上しない台はやっぱり厳しいですかね〜?」とか「あそこの店は遠隔やってますよ」とかもうハチャメチャなのだ。
彼女からいろいろとアドバイスがほしいとお願いされたものの、真っ当な立ち回り方を伝授するのはほぼ不可能だといってもいい。オカルトしか信じないから「信者」なのだ。
そんなわけで適当に話を聞き流していたら「Tさん、私のこと嫌いですかあ…?」と、悲しげな瞳で見つめてきたり…。さすがは元キャバ嬢。男のハートをつかむ技術を熟知してやがるぜ。
そんな(どんな?)流れから、アドバイスがほしいという彼女の願いを叶えるべく本日は一緒に実戦と相成った。
さて、まずは台選びからだ。この日は牙狼の突発イベントで、これまで見たこともないほどクギがガバ開きになっている。当然、千紗嬢にも牙狼を勧めたわけだが、「牙狼は好きじゃないので、私は海を打ちます!」とキッパリ。連日シメシメ状態のダークな地中海へ向かってしまう。
ま、嫌いな機種だから打ちたくないというのは理由としては至極当然。ならばせめて地中海の一番の良台を教えてやろうと思ったが、「昨日一番出てないし〜、それにカドが好きなのでぇ!」という理由でダメダメなカド台にさっさと座る千紗嬢。一緒に打ちに来た意味ないじゃん…。
まあでも正直、自由気ままな現代っ子の千紗嬢と別行動になったので気持ちが楽になった。後は自分の実戦に集中するとしよう。
124回転目。擬似連1回からの魔導トリプル。当たる要素は何もなし。というわけで大あくびをしていたら大当たり絵柄がビタッと止まってアゴが外れそうになる。隣の兄ちゃんも「えっ?」という表情を浮かべ、苦笑い。まあ確率はゼロじゃないからなあ。それにしても貴重な体験。
これで魔戒なら言うことなしだったが、あっさりスルー。しかし、バトル敗北後8回転目、バラゴモード中にまさかの心滅全回転に突入! 当然ながら魔戒に入りこれが5連。本来の実力からすればショボ連と言わざるを得ないも、激回り調整なので最初はこれでもよしとしよう。
実戦開始から数時間が経過しようやく千紗嬢と再会。「魚群ハズしちゃいましたあ…。でも3と4のダブルラインだったから結果的に良かったですよね?」と聞いてくるが、私にはなんのことかサッパリ分かりません…。クギが悪いのだけは分かっているので、とりあえず「ほかに移ったほうがいいんじゃない?」とアドバイスしてみるが、「だって魚群プラス3と4のダブルラインをハズしたんですよ? 爆発のサインですよこれは。続行します!」。なら最初から聞かないでくれい…。
それからもいく度となくアドバイスを受けに来る千紗嬢。が、相変わらず人の話を聞かない。そればかりか出目をメモした小さなノートを見せながら「これはこうで…」とかいろいろ説明してくれる。なんかいつの間にかこっちが生徒みたいになってるし。
15時を回ったころに千紗嬢が慌てて走ってきて「サムが出ました! ここから大爆発します!」と大勝利宣言。そして2時間後。千紗嬢の様子を見に行くと本当に爆発してるんだからパチンコってすごいと思う。彼女はきっと強運の持ち主なのだろう。足元に4箱。別積みで10箱。
見るからにダメダメなクギだが、もしかしたら右打ちで回るのかもと思い、「どのくらい回るの?」と質問してみたところ、返ってきた答えは「カメですね」。全然会話になってない。おじさん疲れちゃったよ…。
さて、一度1000ハマッた後はすこぶる順調だったものの魔戒継続率が悪く、収支は予想を下回った。一方の千紗嬢はオカルト全開で3万発オーバー。参りました。おじさんの負けです。
さらに「Tさん、勝ったんですから奢ってくださいね!」と、例のあの瞳で見つめてくる千紗嬢。2日続けて奢らされるハメになるとは…。まあ、キャバに行ったと思えば随分安いからいいけどね…。というわけで、終日、千紗嬢のペースでした。プラス2万4000円ナリ。
<プロフィール>
白覆面T 競馬雑誌の編集者を経てギャンブルライターへ。現在はさまざまなパチンコ&パチスロ攻略誌で活躍している。鋭い洞察力によって書かれる記事の数々は業界内でも定評アリ。ただし、なぜかいくつものペンネームを使い分け行動しているため、正体を知るものはごくわずか。熱しやすい性格で湯水のごとく金を突っ込む姿が何度も目撃されている正真正銘のギャンブル狂だ。