立ち合い、右を差すと同時に左の上手も掴んだ栃ノ心。これで大栄翔を完全に組み止めると、そこから吊り上げながら土俵際へ追い込み、最後は寄り切りで勝負あり。その取組時間は10秒いくかどうかという、一方的な“完勝劇”で今場所無傷の9連勝を飾った。
この勝利により、1月場所からの勝ち星の合計が大関昇進の目安である“33勝”に到達した栃ノ心。ただ、今年の1月場所での番付が平幕だったことから、この日の9勝目を以って大関昇進が確定したとは言い難い。
事実、解説者の北の富士勝昭氏は場所中のテレビ・ラジオ解説において、度々「12勝なら文句無し。内容次第では11勝でも昇進はあり得る」という旨の発言をしており、ネット上でも同じような意見を持つファンは多い。今後はどれだけ成績を上乗せ出来るかが焦点となるだろう。
今日行われる10日目から千秋楽まで、6名の力士との取組が控えている栃ノ心。中でも注目すべき点は、やはり、白鵬・鶴竜の2横綱との戦いだ。これまで白鵬とは25回、鶴竜とは24回戦っている栃ノ心だが、白鵬には25戦全敗。鶴竜に対しては先場所勝利を収めているものの、通算成績は2勝22敗とこちらもかなり分が悪い。
仮に両横綱に敗れたとしても、その他の力士に全勝すれば最終成績は13勝2敗。場所後の大関昇進は濃厚だろう。しかし、現在その両横綱を星の差1つで抑えて優勝争いのトップに立っていること、また、大関昇進“以降”のことを考えると、今までと同じように易々と勝ち星を献上するわけにはいかない。
6日目の豊山戦では攻め込まれる場面が目立ったものの、この取組以外は終始安定した相撲が取れている栃ノ心。今場所の状態ならば、勝機は十分にあるだろう。これまで辛酸を舐めさせられてきた横綱陣と、今こそ雌雄を決する時だ。
文 / 柴田雅人