「準々決勝から3試合続けて格上の中国人選手を破りました。優勝はもちろんですが、日本にとっても、この3連勝は意義深いものとなりました」(担当記者)
それでも、仲間たちが複雑な表情を浮かべたのにはワケがあった。伊藤は10月に開幕した国内初の卓球のプロリーグ『Tリーグ』に参加していないからだ。
「当然、伊藤も目玉選手になる予定でしたが、伊藤自身がリーグ参加に難色を示し、彼女を支えるスタッフたちも不参加に賛成したと聞いています」(同)
伊藤が国内リーグ参加に難色を示した理由は、危機感だという。
一昨年夏のリオ五輪代表は、福原愛、石川、伊藤だった。ライバルで親友、ダブルスのパートナーでもある平野美宇は落選したが、五輪後に平野が覚醒し、国際大会はもちろん、国内でも女王・石川をしのぐ勢いを見せている。伊藤は「このあたりで巻き返しを!」との思いが強く、あえて厳しい海外での大会を主戦場にすることを選んだのだ。
「伊藤は平野に追い抜かれたと思っています。平野に対する焦りもあったのかもしれません」(関係者)
その意気やよしだが、さらなる不安材料も指摘されている。
「日本の国別団体戦のダブルスの組み合わせは、これまで平野と伊藤の“みうみま”一辺倒でしたが、東京五輪対策として、このコンビを解体。どちらかを、唯一の左利きである石川と組ませられるようにしておくべきだとの意見があるのです」(同)
Tリーグを盛り上げようとする石川と平野、我が道を行く伊藤の間に“距離感”が生じ、団体戦で最も重視されるチームメイトの結束に影響を与える恐れも懸念されているのである。
卓球ワールドツアー優勝を引っさげて帰国した伊藤は「もっと対策を(中国に)練られて成長したい」と、これからの目標を語ったが、「打倒美誠」に燃えるライバルたちは中国選手ばかりとは限らない。まず、日本国内の選手たちの不安材料を打ち消すのが一番の課題だろう。