工藤伸一
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ミステリー 2010年12月10日 12時30分
月のウサギはヒソウサギ!?
ET(地球外生命体)に関するNASA(アメリカ航空宇宙局)の会見が、日本時間11月3日(金)午前4時に行われた。事前の会見告知を受け、ネット掲示板やSNSでは「ついに宇宙人を発見したのか!?」と大騒ぎになっていたが、発表された内容はそういうものではなかった。 生物の常識を覆す細菌が地球上で見つかったため、地球外の星に生命体が存在する可能性が広がったということらしい。この微生物は、遺伝子(DNA)を構成する必須要素と思われていたリンのかわりに、通常は生物を死に至らしめるヒ素を使って生きることができる。こんなケースが可能であるからには、異星人が存在する条件として地球と似た環境を前提にする必要はないというわけだ。 そりゃあ広い宇宙のどこかには異星人が住んでいるだろうとは、素人目にも考え付く。けれど今回ネット配信された会見で、NASA研究員の発言「月にも生物がいるかもしれない」という部分があり、僕はそれが非常に気になった。遠く離れた場所ではなく月に生物がいるとしたら、これは大変なことだ。40年も昔に月面着陸は成功しているのだから、今すぐにでもコンタクトがとれてしまう。とはいえ月の周辺には既に多くの人工衛星も飛んでいるというのに、月の調査に進展がないのは不思議でもある。 「月の住人」で最も有名なのは「かぐや姫」だろう。1987に公開された星新一原作/市川崑監督の映画『竹取物語』で「かぐや姫」を迎えに来たのは、宇宙船だった。宇宙船のような未確認飛行物体(UFO)が発見されることは多いが、それがどこからきているのかは分かっていない。それが月からなのであれば、知的生命体が今も住んでいることになる。もともと人類は月に住んでいて、そこから地球に移住したのではないかなんて話も、どこかで読んだ気がする。 日本には「月にウサギが住んでいる」なんて話も昔からある。それはリンのかわりにヒ素を摂取して生きる「ヒソウサギ」なのだろうか。だとすれば今回の発表は、月に隠された秘密を公表する前置きなのかもしれない。そして来年あたり「ヒソウサギ」の全貌が公開されるのではないかと睨んでいる。だって来年2011年はウサギ年だから。(工藤伸一)【訂正】文中「ケイ素」とありましたが、正しくは「リン」の間違えです、訂正してお詫び致します。
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社会 2010年12月09日 18時00分
サイファーが11都市で開催 谷川俊太郎さんも
詩の朗読会「サイファー」が12月10日(金)に日本10都市と中国西安で同時開催される。代々木公園の東京サイファーには、谷川俊太郎さんも参加予定。主催者の佐藤雄一さんは、2007年に第45回現代詩手帳賞(思潮社)を受賞した詩人で、芸術評論誌『ユリイカ』(青土社)などで活躍する論客でもある。 イベント名の「サイファー」とは、もともとアメリカのラッパーがライムのバイブスを競うべく、自然発生的に発生する集団を指す。ライムとは語呂合わせなどを重ねつつ即興で言葉を紡ぐことで、バイブスはノリや気分のこと。ヒップホップ音楽にも精通する佐藤さんが、現代詩とヒップホップの融合を目指して昨年から始めたイベントである。 詩を吟じながら各地を遊説する「吟遊詩人」は、印刷技術のなかった古代ギリシア時代から続くとされ、今は「ポエトリー・リーディング」とも呼ばれる詩の朗読は、伝統的な表現形式でもある。今の日本にもそういうものがあることを僕が知ったのは、1989年(平成元年)1月23日に放送されたNHKのテレビ番組『ETV8 詩人たちのコンサート〜自作朗読の世界〜』を観たのが最初だった。蜷川幸雄さんが演出を手掛けたイベントを収録したもので、そこにも谷川さんが出ていた。 1997年にはトーナメント形式の朗読バトル「詩のボクシング」が始まり、『詩人たちのコンサート』にも出演していたねじめ正一さんが初代チャンプに。谷川俊太郎さんが2代目で、その後は平田俊子さんや島田雅彦さんが続いた。「詩のボクシング」は今も全国規模で続いており、谷川さんも精力的に単独ライヴを続けてきた。 2000年にはポエトリー・リーディング絡みの出来事が幾つかあった。朗読会を定期的に行う店「Ben's Cafe」(東京都新宿区高田馬場1-29-21)が本の情報誌『ダ・ヴィンチ』で紹介され、それを観に行ったのが僕の朗読会初体験だった。また2000年2月発売のサブカル誌『クイックジャパン』vol.29の巻頭特集は「少女詩人・蛍」で、蛍さんのイベントは超満員になっていたである。更に2000年9月3日には、さいとういんこさんらによる野外イベント「ウエノポエトリカンジャム」(略称:UPJ)が上野恩賜公園で開催された。 2002年に2ちゃんねる「ポエム、詩@2ch掲示板」に常駐していたハンドルネーム「都立家政」こと馬野幹さんが主催した朗読会は『AERA』や『読売ウィークリー』などでも紹介された。高円寺・無力無善寺などで彼の関わるイベントに僕も何度か出演したことがある。更に馬野さんは「上野ポエトリカンジャム3」の代表を務め、ソニーミュージックからCDデビューを果たした本田まさゆきさんや「絶叫短歌コンサート」福島泰樹さんら80名が出場し、1,400人の観客を動員。昨年6月には「UPJ4」も行われ、今度の東京サイファーのゲスト「なのるなもない」さんも出場していた。また同じ月には「現代詩手帖創刊50周年祭:これからの詩どうなる」という催しがあり、そこでも朗読を含むプログラムがなされたそうである。 このように様々な形で続いてきたポエトリー・リーディングの歴史に、今回の大規模サイファーが連なることによって、21世紀の詩の復権を促す、新たなバイブスが産まれることを期待したい。以下、11都市サイファーの概要を添付するが、注意事項など詳細については公式サイトにてご確認を。(工藤伸一)■サイファー公式サイト「CAMPCYPHER」http://d.hatena.ne.jp/CAMPCYPHER/■東京サイファー【日時】12月10日(金)19:00〜22:00【場所】代々木公園 中央広場時計台付近(雨天時は同公園の渋谷門、大雨・洪水・雷「警報」がでた場合「中止」)【最寄り駅】JR原宿千代田線代々木公園or明治神宮前。 18:15、19:15、20:15に原宿駅表参道口にきていただければ目的地まで誘導。「BEC」と書かれた紙を持っています。【主催】佐藤雄一(TwitterID:@yy_sato)【ゲスト】谷川俊太郎、志人(降神)、なのるなもない(降神)。【料金】無料(ペン必須)【ルール】だれでも参加可能。ラップ、自由詩、俳句、短歌、戯曲、小説なんでもあり。ゲスト以外は予選あり。■中国西安サイファー12月10日午後四時(日本時間5時)六人のメンバーは西安興慶宮公園に阿部仲麻呂の記念碑前で集合。記念碑に李白の追悼詩が刻まれている。主宰:伊沙(長安詩歌節http://p.tl/6Whr)原文:12月10日下午四点,六位同仁到西安兴庆宫公园阿倍仲麻吕纪念碑前集合并拜谒,此碑身上书李白著名悼诗■仙台サイファー12月10日(金)19時30分スタート(朗読希望者は19時集合)主宰:一方井亜稀場所:純喫茶 星港夜(シンガポールナイト) 仙台市青葉区上杉1-12-1入場無料(ワンドリンクオーダーお願いします) ペンご持参ください。ゲスト:和合亮一氏※満杯時(20名以上)入場を制限させていただきます。■岡山サイファー世界同時開催Bottle/Exercise/Cypher vol.5岡山会場「にっぽんいちのゆるサイファー」にちじ:2010年12月10日 だいたい19:30ごろからばしょ:D-mediaCreations(http://www.d-mc.jp/)事務所内JR岡山駅から路面電車東山ゆき乗車、東山電停下車徒歩5分。しゅさい:石原ユキオついったー:@yukioi めーる:ishiharayukio@gmail.com【USTREAM】http://www.ustream.tv/channel/yuru-cypher■京都サイファー時間:12月10日(金)20時スタート主催:清野雅巳場所:清野宅問合せ先:tseliotjp@yahoo.co.jpustアカウント:kyoto_k■名古屋サイファー時間:12月10日(金)20時スタート主催:鈴木陽一レモン場所:金山総合駅南口ロータリー問合せ先:lemon_ys@hotmail.com.■広島サイファー時間:12月10日13時半場所:アストラムライン「不動院」改札集合■福岡サイファー主催:福岡サイファー事務局 代表:松本秀文 共催:ドネルモ日時:12月10日(金) 19:30〜20:30(19:00開場)会場:冷泉荘読書室・A棟21号室〒812-0026 福岡県福岡市博多区上川端9-35参加費:入場無料定員:10名【申込・問合せ先】sokudotarou@yahoo.co.jp(福岡サイファー事務局 担当:松本)詳細のURLはこちらです。http://donnerlemot.com/2010/11/30000835.html■大阪サイファー日時:12月10日 19時30分〜(開場19時〜)場所:Bar rest (大阪市中央区難波4-7-9 南進会館ビル2F(新歌舞伎座跡の裏通り、なんば楽座内。なんばウォークB5出口から地上へ、1分)料金:無料(サイファー時のみ・持ち込み不可)定員:最大9名(店のキャパシティにより。かなり詰めていただくかと思います。基本7名です)その他:参加者の方は当日15時までに参加表明お願いいたします(定員の関係)。ご連絡なしの当日参加もだいじょうぶですがその際のお席の保証はできかねます。■札幌サイファー「古本とビール アダノンキ」主宰:書肆吉成(http://diary.camenosima.com/)060-0061札幌市中央区南1条西6丁目 第2三谷ビル2F(地下鉄南北線大通り駅出て電車通りを西へ、東急ハンズの2軒西隣北向き)時間は16:00から30分から1時間程度と考えております。■三重サイファー時間:12月10日(金)19時〜20時スタート主催:今唯ケンタロウ場所:四日市市(屋内の場合)/鈴鹿市(屋外の場合)
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社会 2010年12月07日 18時00分
死の教育はどうあるべきか?(2)子供の自殺
小学校の教師が児童に出した不適切クイズを引き合いに「死の教育」の必要性について書いた続きである。前回の内容に関してmixi上に多くのコメントが寄せられていて、補足すべきことがあるように感じた。少しでも疑問を解消できれば幸いである。 前回なぜ「殺人クイズ」から「子供の自殺」に話が転じたかと言うと、自殺も殺人であり、自分の死は他人から見れば他人の死だからである。子供の自殺だけでなく、子供の殺人も時おり発生している。義務教育は読み書きだけ教えればいいわけではない。よりよい集団行動のあり方は決して家庭だけで身に付けられるものではないから、何より他人との接し方を教える場でなくてはならない。だからイジメが存在する時点で義務教育は失敗している。しかも自殺や殺人にまで発展してしまうのが問題だ。ケンカ慣れしていないということもあるように思える。 先生が子供に尊敬されるために、畏怖心を植え付けようと怖い話をしたのかもしれない。東村アキコさんの育児漫画『ママはテンパリスト』にも「ごっちゃん」が言うことを聞くように「鬼」の話をして怖がらせるエピソードが出てくる。教育とは「型にはめること」だ。「ゆとり教育」は「個性尊重教育」とも言われるが、個性は教育からはみだしたところに芽生える。この「ゆとり教育」の余波は大学教育にも影響を及ぼしているだろう。ゆとり教育を受けた子供が既に教師になっている。大学の一般教養課程で履修する哲学と、現実における道徳がつながっていないことも問題だ。 学校は読み書き計算を教える場所である以前に、集団行動を教える場だ。それは家庭では教えることができない。イジメっ子の名前を遺書に書いて命を断つ子供は、死なないことにはそれを親にも話せなかったということになり、親子の信頼関係にも問題がある。イジメも自殺も共に悪いことだ。けれど未成熟な子供にその全責任を負わせることはできない。学校と親それぞれの責任だ。読み書き計算は家や塾でも学習できる。試験は学校で受けねばならないが、できるだけ人間関係を学べるようにしてほしい。 ところが親や教師の側にも心を病んでいたり自殺する者もあるから、子供にまで気が回らないのかもしれない。しかしそんな時代だからこそ、自分たちより非力な子供が生きるのは更に過酷であることを、気にとめておく必要があるだろう。(工藤伸一)
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トレンド 2010年12月04日 19時09分
「第十一回文学フリマ」が開催!
文学系同人誌の即売会「第十一回文学フリマ」が12月5日(日)に催される。大塚英志さんの呼びかけによって2002年11月に始まり、前回5月の来場者数は約3,000人。今年夏には56万人を超えたとされるコミックマーケットにこそ及ばないものの、動員数は回を追うごとに更新されている。 かくいう僕も活字と同じくらいコミックやアニメやゲームも好きだが『機動戦士ガンダム』の作者・富野由悠季さんは「アニメばかり観てないで活字も読め」と講演のたび仰るとか。読むだけじゃなくて書いてみると、更に文章が好きになれると思う。そしてそれを文学フリマに出展してみるのも一興だろう。 このイベントにはプロの書き手によるサークルも多く、雑誌やテレビで見たことのある方が売り子をされていることも。客の中にも有名人は多く、会場をうろうろしているだけでも楽しい。有名人によるブースはたとえば、『文学賞メッタ斬り!』などで知られる豊崎由美さんの、V-20「書評王の島」/青林工藝舎などで活躍する漫画家による、P-01「西岡兄妹」/中原中也賞詩人による、S-20「三角みづ紀」などがある。 また今回は「twitter小説」がらみで、A-17「南洋文芸通信社」/A-18「ついのべ豆本♪部」/A-19「ついのべ電書部」の3ブースが並んでいるのも特徴。「ついのべ」とは、80冊もの著書を持つ人気作家・内藤みかさん(twitterID:@micanaitoh)が考案した、twitter小説用ハッシュタグ「#twnovel」の愛称。これを付けてtwitter小説を書くと「#twnovel」の部分にリンクが張られ、クリックすれば大勢の書き手による「twitter小説」の一覧を読むことができる。 おりひかいくおさん(twitterID:@Orihika)が編集した『月刊(?)twitter小説vol.2』(南洋文芸通信社)によると、twitter小説家は今年4月30日の時点で7,200人。昨年7月から約1年だったことを考えれば、今は1万人を超えていると思われ、今後の行方が気になるムーブメントである。 文学フリマには評論系の本も多い。U-11「科学魔界」代表はSF評論家の巽孝之さん。ア-09「筑波批評社」/エ-20「新文学」/エ-29「未来回路製作所」/エ-41「萌え理論」は、2008年11月の「第七回文学フリマ」を舞台に繰り広げられた、講談社BOX主催「東浩紀のゼロアカ道場」第四回関門参戦者によるブース。「新文学」には、僕も寄稿している。 なお番号の前がアルファベットの場合は大展示ホール、カタカナなら小展示ホールにブースがある。人気サークルの本は、コミケと同じく早々に売り切れてしまうので、ご注意を。(工藤伸一)
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社会 2010年12月03日 18時20分
秋葉原事件を題材にした映画が無料上映
佐々木友輔監督の映画『夢ばかり、眠りはない』無料上映会が、12月4日(土)に東京大学で行われる。上映後には監督らによるトークショウもある。この作品は秋葉原事件を題材にした「風景」映画。東京芸術大学大学院博士後期課程(先端芸術表現専攻)に在籍中の佐々木さんは、その独特の映画哲学により日常を異界化させる映像作家だ。 内容紹介も兼ね、6月14日に渋谷「UPLINK FACTORY」で行われた上映会での感想を記そう。2008年6月8日に発生した秋葉原無差別連続殺傷事件。女性映像作家が残した日記とビデオテープには、事件の容疑者Kと、そして親友Kに関する記録が収められていた。事件をきっかけにして無情感に苛まれた彼女は、何か自分に出来ることはないかと、事件の起きた秋葉原や容疑者の出身地をさまよい、為すべきことの手掛かりを探す。 容疑者は既に逮捕されているから、もちろん犯人探しが目的ではない。けれど間接的に事件に巻き込まれ、打ちひしがれた想いをどう処理すべきか分からないことには、先にすすめないのだ。彼女の追体験をする観客の僕らも、いつしか奇妙なわだかまりを抱えていることだろう。それをどのように扱うかはそれぞれが判断するしかないが、おそらくそのヒントは風景の中に隠されている。 怖く悲しい映画だ。都市や郊外から切り取られた情景に、次から次へと挿入される思想や詩情。デリケートなセンチメントにパンキッシュなノイズが交錯し、安堵や不安の混在した亜空間へ僕らをいざなう。人物がまともに映し出されることは殆どなく、そのかわりに世界それ自体の息づかいが聞こえてくる。それはまぎれもなく自分たちが住むこのセカイの、誰もが見なれた風景。しかしそこには何か、別のものが宿っているかのように視える。映そうとしないからこそ映り込んでしまう、いわば心霊的な何かが。その正体は、皆さんの目で確認してほしい。(工藤伸一)・『夢ばかり、眠りはない』上映+トークイベント in本郷http://yumenemuri.web.fc2.com/html/menu_01_6.html開催日:2010年12月4日(土)時間:上映17:00(トーク19:15)料金:無料場所:東京大学 情報学環・福武ホール 福武ラーニングスタジオ2・3企画・主宰:坪井遥(twitter ID @YashinNoMeisou)、北村剛貴(twitter ID @gauqui)・『夢ばかり、眠りはない』公式サイトhttp://yumenemuri.web.fc2.com/
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トレンド 2010年12月03日 16時30分
『サブカルチャー戦争』と『新文学03』
11月3日(金)20時からニコニコ動画で生放送される「『サブカルチャー戦争』と『新文学03』」は、2日に発売された限界小説研究会の新著『サブカルチャー戦争−−「セカイ系」から「世界内戦」へ』(南雲堂)と、5日に発売される文芸空間社の新刊『新文学03−−革命×ネット×二十一世紀文化のエグいコンテンツ』についての合同討議。 出演者は、藤田直哉(限界小説研究会)海老原豊(限界小説研究会)鈴木真吾(.review)北守(はてサ)松平耕一(新文学)の5名。藤田さんと海老原さんは『サブカルチャー戦争』の著者であるとともに『新文学03』にも寄稿やインタビューなどで関わっているため、出演者全員が『新文学03』の関係者。 限界小説研究会とは、笠井潔さんや小森健太朗さん(共に小説家兼評論家)と20代の若手評論家による批評集団。昨年刊行された『社会は存在しない−−セカイ系文化論』(南雲堂)は、ゼロ年代(2000-2009年)の文化を表現する用語として流行した「セカイ系」を軸にした評論集だったが、今回はその先に「世界内戦」を据えることで、2010年以降の流れを予測しようと目論む。 一方『新文学03』は松平さんが編集する批評誌。前号『新文学02ゼロ年代の六十八選−−二十一世紀文学史へ』では、セカイ系も含めつつ様々な観点からゼロ年代を総括していた。今回は「エグい」をキーワードに、更なる「ライトテロル革命」を目指す。なお「ライトテロル」とは松平さんの造語である。鈴木さんが編集に携わる『.review』も尖鋭的な批評誌で、北守さんは「はてなダイアリー」を中心に活躍する「はてなサヨク(略して、はてサ)」の論客でもある。 12月5日(日)に開催される「文学フリマ」エ-13「文芸空間社ブース」では『新文学03』(800円)とともに『サブカルチャー戦争』も部数限定で販売。定価2,650円のところを2,000円まで値下げしてくれるそうなので、要チェックだ。また12月18日(土)には、刊行記念トークショーが青山ブックセンター本店で行われる。笠井潔さん、白井聡さん、鈴木英生さんが出演し、司会は藤田直哉さん。定員100名、入場料500円。ABCオンラインストアで予約を受け付けている。 なお参考画像の左は『新文学03』で右が『サブカルチャー戦争』だが、並べてみると紅白歌合戦のようだ。(工藤伸一)・ニコニコ生放送『サブカルチャー戦争』と『新文学03』2010/12/03(金) 開場:19:57 開演:20:00http://live.nicovideo.jp/gate/lv33548107・第十一回文学フリマ日時:2010年12月 5日(日)11:00〜17:00会場:東京都大田区産業プラザPiO(京浜急行本線京急蒲田駅徒歩3分、JR京浜東北線蒲田駅徒歩13分)公式サイト:http://bunfree.net/・限界小説研究会BLOGhttp://ameblo.jp/genkaiken/・松平耕一BLOG「文芸空間」http://literaryspace.blog101.fc2.com/【訂正】青山ブックセンターのイベント開催日が11月26日(金)となっていましたが予約開始日の誤りで、正しい開催日は12月18日(土)です。申し訳ありません。以下URLからオンライン予約ができます。http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_201010/1218.html
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社会 2010年12月03日 12時35分
「今年の漢字」締切せまる!
世相を表す漢字一文字で一年を振り返る「今年の漢字」は、財団法人日本漢字能力検定協会の恒例行事。公募で最も応募の多かった漢字が「今年の漢字」となる。12月12日の「漢字の日」にちなみ、12月中旬に清水寺の森清範貫主が大きく毛筆で揮毫する。その後は清水寺「奥の院」のご本尊・千手観世音菩薩に奉納する儀式が行われるそうである。 書店などに設置された応募箱での受付は1日に終了。郵送での投票は3日必着だが、同日中なら漢検の公式サイトにある専用フォームからの応募も可能。僕は「海」を投じてみた。応募理由欄には「龍馬・捕鯨・尖閣・大和など、海に関する出来事が多かった」ことを挙げた。「波」や「浪」も捨てがたい。 「今年の漢字」が始まったのは1995年で、今年で15回目。初回の漢字は「震」で、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、金融機関の倒産などを表していた。以降、96年「食」97年「倒」98年「毒」99年「末」と続く。「末」は世紀末と末広がりをかけていたというから気が利いている。 更に2000年「金」01年「戦」02年「帰」03年「虎」04年「災」05年「愛」06年「命」07年「偽」08年「変」と続き、民主党政権やオバマ大統領が誕生した昨年は「新」。過去に同じ漢字が選ばれることはなかった。昨年の応募総数は161,365通で過去最高。そのうち1位「新」の応募数は8.73%で、2位は「薬」6.31%、3位は「政」3.32%だった。 それにしても「今年の漢字」には驚嘆させられることが多い。多数決の一般公募でここまで見事に世相を表せるものなのかと。民主主義を衆愚政治と揶揄する人もいるが、民衆はそんなにバカではないことを証明してくれているように思う。とはいえ最近は何でもパソコンなどの文字変換機能で済ませてしまうため、漢字の読みは何とかなっても書き方を忘れてしまうことが多い。英語力が問われることも多い昨今だが、母国語ができないのもどうかとは思うので、漢字検定を受けてみたい気もする。 手書きで書くものといえば年賀葉書もそのひとつ。印刷で済ましてしまう場合もあるが、手書きを添えると好印象だと言われる。実は郵便事業株式会社の特設サイト「郵便年賀.jp」に「今年の一文字」というものも登場している。これはTwitterで最も使った漢字を教えてくれるサービス。僕は「思」だった。Twitterを使っている方は、試してみては。(工藤伸一)・財団法人日本漢字能力検定協会:2010年「今年の漢字」http://www.kanken.or.jp/years_kanji/index.html【応募期間】2010年11月1日(月)〜12月3日(金)必着【発表】2010年12月10日(金)京都清水寺にて・郵便事業株式会社:郵便年賀.jp「今年の一文字」http://www.yubin-nenga.jp/hitomoji/
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トレンド 2010年11月29日 14時00分
三島由紀夫没後40年目の憂国忌(3)
三島と犬猿の仲だったと言われる太宰治は、愛人の山崎富栄と心中している。遺稿の題名はまるで別れを告げているかのような『グッド・バイ』で、これも同様に現実と小説がリンクしていたように見える。太宰の場合は何度も死のうとしては生き延びてきたことから、本当に死ぬ気はなかったとも言われているが、常に本気で死ぬ気ではあったのかもしれない。その証拠に、最初の小説集からして『晩年』と名づけたほどである。 玉川上水から太宰の水死体が発見された6月13日が彼の誕生日だったのも不思議な偶然だが、自らの死をデザインできたのは最期まで三島と競った結果なのかもしれない。自分で書いた物語のエンディングは作者が決めることができるけれど、作者が生きる現実のラストは自ら決めることができない。作家が小説を終わらせるようにして人生を閉じてしまうのは、自分の人生にまでオチを付けようと考えてしまう一種の職業病のようなものにも思える。 太宰とは逆に三島と仲の良かった美輪明宏は、今年10月19日にフジテレビ系列で放送された『女神のキセキ』に出演した際「自決する前の三島さんに会ったとき、彼が二・二六事件の青年将校の霊にとり憑かれていることに気付いた。何とか除霊を試みようとしたが、大勢の霊に邪魔されて、連絡をとることができなかった」と語っている。二・二六事件は1936年(昭和11年)に起きたクーデター未遂事件。翌年までに首謀者のうち2名が自決し、18名が死刑を執行されている。で「昭和維新断行」を合言葉にしていた彼らにとって、昭和と共に生きた三島は、寄り代として適格だったのだろう。 三島が決起に至った理由は「陸海空軍を保持しないとする日本国憲法第9条第2項と自衛隊の存在は矛盾しており、自らを否定する憲法と闘うべきだ」との考えからであったとされている。当時の隊員らに三島の言葉は届かなかったが、今年に入ってから自衛隊元幕僚長による反中デモや、海上保安庁航海士による尖閣ビデオ流出など、憂国の士による動きが活発になってきている。かつて三島に憑依した二・二六事件の青年将校の霊は、今やもう黄泉の国へ旅立ったのだろうか。あるいは今も日本のどこかを彷徨っているのかもしれない。三島や森田の霊と共に。(工藤伸一)
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トレンド 2010年11月27日 14時00分
三島由紀夫没後40年目の憂国忌(2)
三島はデビュー当時から川端康成と親交が深く、二人の手紙を収録した『川端康成三島由紀夫往復書簡』(新潮社)も出版されている。交流は1945年(昭和20年)に処女小説集を贈呈した三島に川端が礼状を送って以来、三島が死ぬまでの25年間に及んだ。三島はノーベル文学賞を主催するスウェーデン・アカデミーあてに川端の推薦文を書いた。そして川端は1968年(昭和43年)に日本人初のノーベル文学賞を受賞。 その直後に行われた川端、三島、伊藤整による座談会の貴重映像がNHKアーカイブスにある。「毛唐に僕の文学が分かるとは思えない」として受賞を不服そうにする川端を「そんなことはないですよ、川端さん。これは素晴らしいことです」と三島がなだめるシーンが印象的だ。ちなみに三島は恩師である川端を先生とは呼ばず、さん付けで呼ぶようにしていたそうである。 三島自身も海外での知名度は高く、もっと長く生きていればノーベル文学賞を受賞していたのではないかとも言われている。しかし川端が受賞した2年後に自決。更に2年後の1972年(昭和47年)4月16日、川端は神奈川県逗子市の仕事部屋でガス自殺により世を去った。まるで三島の後を追うかのようにして。 三島の自決は、遺作『豊饒の海』を完成させるためだったとも言われている。病気や事故により他界した作家の遺稿なら未完であることが常だが、三島は大長編『豊饒の海』第四巻「天人五衰」を書きあげてから事に及んだ。『豊饒の海』は各巻ごとに主人公が変わる。前の巻の主人公は死に、次の巻で別の主人公として転生するからだ。しかし最終巻の主人公だけは死ななかった。そのかわりに作者が死んだ。 全ては作者の計画通り。今風にいえば小説が現実に飛び出すメディアミックスだったのである。読者がその事実を知ることになるのは、遺作が公開されて以降だったことになるから、最後のネタばらしは小説が担うことになる。なお『豊饒の海』の主人公達は20歳で死ぬ運命だったが、三島は当時45歳。これでは計算が合わないが、彼と共に死んだ盾の会学生長・森田必勝は25歳だったから、二人の年齢差がちょうど20歳になる。森田と心中することも最初から計画されていたことだったらしい。※三島由紀夫没後40年目の憂国忌(3)につづく(工藤伸一)
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トレンド 2010年11月26日 13時30分
三島由紀夫没後40年目の憂国忌(1)
昭和の文豪・三島由紀夫が民兵組織「盾の会」のメンバー4名を率いて自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)総監室を占拠し、自衛隊員にクーデターを呼び掛ける演説後に自決したのは、1970年(昭和45年)11月25日の白昼であった。盾の会学生長の森田必勝(まさかつ)は、切腹した三島を介錯(苦しまぬよう首をはねること)しようとするも失敗し、森田も切腹。居合の心得のあった古賀浩靖(ひろやす)が二人を介錯した。 三島と森田の命日11月25日は「憂国忌」と呼ばれ、今年は没後40年に当たる。東京都千代田区の九段会館大ホールにて催された追悼会には1000名以上の参列者が集ったそうである。第一部は松本徹(三島文学館館長)を祭主とする鎮魂祭で、乃木神社宮司による儀式などがなされた。第二部は「あれから40年。日本はどこまで堕落するのか」と題し、宮崎正弘、井尻千男、遠藤浩一、桶谷秀昭、西尾幹二らによるパネルディスカッションが行われた。 没後40年を経た今もなお人々を魅了して止まない三島由紀夫とは、果たしてどのような人物であったのか。ここでおさらいしてみたい。彼の本名は平岡公威(ひらおか・きみたけ)。1925年(大正14年)1月14日に、平岡梓と倭文重(しずえ)の長男として生まれた。農商務官僚だった父親の同期には後に総理大臣となる岸信介がいて、母親は橋健三(漢学者)の次女である。16歳の時に書いた小説「花ざかりの森」で三島由紀夫の筆名を初めて使い、同名の処女小説集を出版したのは19歳の時だった。 その後25年に渡り『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』など多数の名作を残し、1970年(昭和45年)11月25日に満45歳で自決した。昭和45年に満45歳だったことからも分かるように、彼の人生は昭和と共にあった。三島の生まれた翌年1926年(大正15年)12月25日は昭和元年であり、三島が生まれる4年前の1921年(大正10年)11月25日は昭和天皇が大正天皇の摂政として公務を始めた日でもある。昭和天皇は三島自決から19年後の1989年(昭和64年)1月7日に崩御された。 ※三島由紀夫没後40年目の憂国忌(2)につづく(工藤伸一)
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