工藤伸一
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トレンド 2010年09月28日 18時00分
松たか子さんらが海外小説を朗読 国際ペン東京大会
表現の自由を呼びかけ、語族を越えた国際交流を目的とする、国際ペン東京大会。 開会式に先駆け行われた文学フォーラム2日目の9月24日(金)には、松たか子さんがチママンダ・ンゴズィ・アディーチェさん(ナイジェリア)の小説『なにかが首のまわりに』(河出書房新社『アメリカにいる、きみ』表題作の改稿)を朗読。ナイジェリア人女性とアメリカ人男性の異文化交流を描く切ないラブストーリーを、森ミドリさんによるチェレスタとピアノの清廉な演奏と共に瑞々しく表現。 演目後には作者がコメント。「アフリカでは日本車が最も信頼できると大人気だから日本に憧れていた。大学教授の両親を持つ私の作品は、本物のアフリカ黒人の小説とはいえないとアメリカの白人男性に言われたこともあったが、先進国同様の教養を身に付け豊かな生活をする者もいる。ステロタイプに見られがちなアフリカ人に顔を持たせ、その背景に人間がいることを知らせていきたい」と語った。 次に神田松鯉さんが莫言さん(中国)の小説『牛』(岩波書店より刊行予定)を朗読。文化革命期中国の悲哀を諧謔的に綴る物語を、講談師ならではの名調子で披露。3頭の牡牛は主人公である少年の遊び友達だったが、餌不足解消のため去勢されることに。牛は国家の貴重資源として厳しく監視されており、慎重に扱わねばならない。しかし一頭が瀕死となり、果ては大騒動にまで発展する。中国琵琶奏者シャオロンさんの幻想的な調べと、田中泯さんの舞踏も。田中さんは全身を赤く塗り性器丸出しも厭わず生命の躍動感を伝えた。 翻訳者の菱沼彬晁さんが、来日できなかった作者のメッセージを紹介。「私が幼少の頃、農民に多くの牛を飼う余裕はなく、子供に牛追い遊びをさせ死期を早めさせた。牛は大事と言いつつ虐待していたのだ。そして今は商品として機械的に殺される。尊厳を奪われた牛を巡る歴史は、文学を取り巻く環境にも似ている」(工藤伸一)
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トレンド 2010年09月25日 06時00分
阿刀田高さんとサラ・パレツキーさんの文学作品を、元NHKの松平定知さん・山根基世さんが朗読
「第76回・国際ペン東京大会2010・文学フォーラム」が早稲田大学大隈講堂(新宿区)にて行われている。テーマは「環境と文学」。 初日9月23日(木)の催しは2つ。初めに阿刀田高さん(日本ペンクラブ会長・直木賞作家)の小説『闇彦』(新潮社)を松平定知さん(元NHKキャスター・朗読を中心に活動する「ことばの杜」所属)が朗読。脚本演出は吉岡忍さん。加藤純さんの絵画を使った四位雅文さんの映像をバックに、植松葉子さんの横笛と古賀裕己さんの小鼓にて演奏される森ミドリさん作曲のBGMを交えて進行。 日本神話の海彦山彦の他に死を司る闇彦がいてギリシャ神話のハデスと繋がるという壮大な仮説が、小説家の主人公と謎めいた女性の交流とともに展開する物語。朗読後に阿刀田さんも登壇。説話と男女を巡る環境を意図して書かれ、朗読は長編小説の要約のため原作では更に精緻な理論が構築されていることなどを語る。 次にサラ・パレツキーさん(米国女性作家)の自伝的エッセイ『沈黙の時代のなかで書く』(早川書房・山本やよいさん訳)を、山根基世さん(元NHKアナウンス室長・ことばの杜代表)が朗読。途中に茂本ヒデキチさんのライブ描画も。演奏は定成誠一郎さんと定成淡紅子さんによるパーカッション。 人種差別や性差別、9.11以降の政治的環境と抗戦してきた作者の生い立ち、執筆を支えてくれた架空の人物アグネス、自作小説の主人公・女性私立探偵 V・I・ウォーショースキーについて語る内容。朗読後にパレツキーさんも登場。政治的内容を含む初講演では豪雨の中を駆け付けた聴衆が喝采してくれたとの話は、当日の天候にも重なり不思議な縁を感じさせた。 ペンクラブ会員向けの同大会だが、25日までのフォーラムや26日の開会式、並行して行われるセミナー、朗読会は一般公開される。事前予約は終了しているものの、空席のある回は当日受付もあるとのこと。(工藤伸一)
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トレンド 2010年09月23日 14時00分
芥川賞作家・金原ひとみ×東工大助教授・往住彰文×文芸評論家・藤田直哉ワークショップを観てきた
9月13日(月)に東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)で行われた、小説家・金原ひとみ氏と東工大「文学機械」グループ・往住彰文氏(東工大大学院社会理工学研究科価値システム専攻助教授)、藤田直哉氏(SF・文芸評論家)の3名によるワークショップを観てきた。 金原氏の芥川賞受賞作『蛇にピアス』は、タトゥーやピアスなどの「人体改造」がエスカレートし、蛇のように舌を真っ二つに裂いてしまう「スプリットタン」が登場する異色作で、蜷川幸雄監督・吉高由里子主演の映画も話題を呼んだ。往住氏は第12回日本感性工学会大会の実行委員長である。人間の機械化と機械の人間化という点で工学と人体改造は似ていて、今日の顔ぶれに繋がったようだ。藤田氏は現在発売中の月刊誌『ダ・ヴィンチ』10月号から小説家・新井素子氏とSFについて語る連載を始めており、第1回目のテーマは「美容」で、こちらも人体改造とリンクしている。美容と人体改造には美意識の違いこそあれ、根底にあるのは美の追求であろう。 「なぜ人体改造に興味を持ったのか」との徃住氏からの質問に対し、金原氏は「病気になって健康の大切さを知るように、自分を痛めつけることで逆に生の実感を得たいのだろう」と答え、現に執筆に悩みストレスを感じるとピアス拡張をするそうである。酒や煙草で内臓を虐めることやピアスやタトゥーで皮膚を苛めることは、筋肉を鍛えるために筋組織を壊し再生させるのと同様、自信のある部位ほど強くしたい願望によるのだろうか。 藤田氏によれば「創作の始まりには様々な動機がモヤモヤしていて、その起因は無数にある」とのこと。往住氏は『蛇とピアス』における女1人男2人の関係性を図式化して解説していたが、この場における女1人男2人の考え方の違いは、金原氏が描く人間関係の難しさとも重なる。この対話が金原ワールドの今後に影響を及ぼすこともあるのかもしれない。(工藤伸一)
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トレンド 2010年09月22日 19時00分
水嶋ヒロの唐突な事務所退社に、ネット上では麻薬中毒を疑う声もあるが…
俳優・水嶋ヒロが9月20日付けで所属事務所・研音を退社。小説家を目指して執筆活動に専念するためだそうであるが、何らかの事情で事務所と揉めたせいだとか、田代まさし逮捕直後のタイミングから薬物中毒を疑う声も。確かにマーシー同様の激ヤセぶりは気になるが、それは役作りやバセドウ病治療で活動休止している歌手・絢香夫人の病状を案じての心労もありそうだ。そして小説家なら妻を傍で見守りつつ仕事もできると考えたのではないか。授かり婚でもないのに人気絶頂の身でありながら若くして結婚した彼には、同性ながら惚れてしまいそうなほどの男気が感じられる。 ブログの文章も面白かったのでどんな小説を書くか楽しみだが、それにしてもなぜ小説なのか。帰国子女のため英語が堪能な上に慶應大卒でもあり以前から本が好きだったり、お笑い芸人・品川ヒロシのデビュー小説『ドロップ』原作の映画主演に感化され、公開中の映画『BECK』でミュージシャンを演じた流れで、創作欲に芽生えたのだろうか。努力が実り俳優兼小説家ということになれば、夫人の病が回復した暁には原作主演を兼ねて映画を撮るなんてこともありそう。良い俳優だっただけに突然の休業は残念でならないが、ここはひとつ彼の才能を信じ、来るべき復活劇を待とうではないか。 麻薬ではないにせよ中毒性の高いものに魅入られた可能性はある。ただしそれは通常の麻薬のように刹那的快楽を与えるのではなく、恒常的に人生を豊かにしてくれたりする。麻薬を売る側に回れば罪が重くなるだけだが、それを作る側は逆に罪を改められる可能性にさえ満ちている。それを作るため本物の麻薬を使う人も稀にいるようだが、それさえあれば他の麻薬を必要としない者は多い。それに近い自覚症状がある僕には、水嶋ヒロが築き上げてきた人気の座を投げ打ってまで挑もうとする気持ちも分かる。それはいかなる麻薬よりも刺激的な活字中毒である。(工藤伸一)
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芸能 2010年09月21日 12時00分
【押尾学公判/田代まさし逮捕】「ノリ塩祭り」の次は「シマシマ祭り」?
9月16日(木)、タレント・田代まさし容疑者が麻薬取締法違反(所持)の疑いで5度目の逮捕。一部報道では「自称タレント」と表記されたものの、精力的に芸能活動は続けていて、逮捕直前にもラジオの仕事を終え、翌日にはAV男優・加藤鷹や山本竜二とのトークイベントを控えていた。 芸能界の薬物汚染絡みでは、保護責任者遺棄致死罪にも問われている元俳優・押尾学被告の公判が注目を集めていて、押尾の逮捕直後には酒井法子夫婦の事件も重なり、ネット上では「お塩VSノリP=ノリ塩祭り」と呼ばれたが、今度はマーシー逮捕が被ったため「お塩VSマーシー」という有様で、押尾が話題になると何故か邪魔が入るようだ。押尾学と田代まさし。この二人は名前の2文字目と4文字目に「し」と「ま」が共通しており、今回は「シマシマ祭り」とでも呼びたくなる。逆さに読めば「マーシーマーシー」になるように、もはや人気者とは正反対だ。 度重なる逮捕後にVシネマ監督も務めたマーシーだが、転落のきっかけとなった最初の逮捕は盗撮によるものだった。AV男優の話ではカメラの前でしか勃たなくなる職業病もあるとか。彼もまたテレビ番組の「アイドル寝起きレポート」で人気を博していた流れで盗撮に興味を抱き、お笑いに必要なハイテンションをキープするためクスリに頼ることになったのだとしても、度重なる反省のなさを考えれば同情の余地があるのか疑問ではある。 4度も復帰のチャンスを与えられてきたにも関わらずこの体たらくでは、自称どころか自傷タレントという感じだが、それでも彼を擁護する声は多い。だが関係の深い者ほど裏切られたことへの苛立ちは強いようだ。マーシーが憎めない人柄の持ち主であることに異存はないが、誰も彼を魔の誘惑から救えなかった事実は確かであり、今後どう接していくべきか真剣に考え直さなければなるまい。それが本当のファンではなかろうか?(工藤伸一)
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社会 2010年09月20日 18時45分
なぜ「バカボンのパパ」には名前がないのか? 「賛成の反対なのだ〜」の意味とは?
9月14日(火)、Googleトップページがバカボンファミリーに占拠された。職場でサイバーテロ対策に奔走していた観光研究者・井上ざもすきさんは「Googleもやられた!」と上司に報告して怒られたそうであるがそれもそのはず、これはギャグ漫画の金字塔『天才バカボン』作者・赤塚不二夫氏の生誕75周年を祝う記念企画だったのだ。 08年に72歳で赤塚氏が亡くなられた際には筆者も葬儀に駆け付け、ファン向けの祭壇で別れを惜しんだ。出棺の折「これでいいのだ」のフレーズが耳に残るアニメ主題歌「バカボンのテーマ」が響き渡り、その能天気さには寺院のものものしさを吹き飛ばす場違いさも感じられたが、逆にその明るさゆえに天才を失った喪失感が現実味を帯びてきて、参列者の悲しみを増幅させた。 そこで筆者は気が付いた。お寺とバカボンの主題歌がマッチするのは当然ではないかと。なぜなら「バカボン」を漢字で「莫迦梵」と書けば、それは悟りを開いた者を意味し、お釈迦様の尊称でもあるからだ。この話はかつて、様々なムダ知識を紹介するフジテレビ系列の人気テレビ番組『トリビアの泉』でも紹介された。赤塚氏に才能を見出され芸能界入りした逸話を持つタモリ氏の司会番組だったことも、不思議な符号ではある。 さて『天才バカボン』の主人公・バカボンが神仏と交信して人類を導く解脱者的存在であるなら、バカボンのパパに名前が無い事情も察せられる。その天真爛漫な奇人ぶりは、人智を超越した神仏さながらに尊いものだからであろう。フジオプロによれば、バカボンのパパが良く使う「賛成の反対」は「つまり反対」かと思いきや、単に「賛成ではない」ということで、簡単にいうと「これでいいのだ」を意味するとか。神仏の類が実在するとしてもそれは決して賛成とも反対とも言わず、ただ静かに我々の所業を見守っているものなのではないか。「これでいいのだ」とばかりに。(工藤伸一)
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社会 2010年09月17日 11時00分
「ゆるふわ」と「クラウド」と「テン年代」
2000年から2009年までのゼロが2個並んだ10年間を「ゼロ年代」として括る風潮が、批評家や学生界隈にある。ごく一部にしか通用しない内輪ネタと看做されたりもするが、新聞や週刊誌・漫画雑誌などでも普通に目にするようになったので、それなりに流行しているように思える。 その「ゼロ年代」の論壇をリードしてきたと目される批評家・東浩紀氏は、テレビ番組にレギュラー出演したり、ツイッターでの注目度も高いことから、彼の得意な哲学・文学・アニメに興味が無い人にも、有名人として認知されつつある。 その「ゼロ年代」の次は「テン年代」との説が出始めていて、「天然」にも通じる言葉ゆえ、ユニークな言動が賛否両論を呼んだ鳩山由紀夫前首相の天然ぶりが象徴的との声もあった。 さてゼロ年代のIT業界のキーワードが「IT革命」だったとすれば、テン年代は「クラウド」と言えそうだが、ファッションの世界では「ゆるふわ」という言葉も同時に流行していて、このふたつの性質は似通っているように思えるのだ。 「クラウド」とは、時間のかかる計算をする際にスーパーコンピュータを使うのではなく、普通のPCが助け合って作業することでスパコン同等の能力を発揮させられる構想のことである。 「クラウド」は「雲」に由来する言葉で、小さな粒子が寄せ集まり大きな雲に見えても実際はひとつの物質ではないことに似ているとして、名づけられた。 そして「ふゆふわ」は、カッチリとキメ過ぎないファッションのコンセプトであり、それは空を漂う不定形な「雲」を指すのにも適した形容詞であると共に、「天然」の雰囲気が醸し出す癒し系のニュアンスにも通じる。 かくして「テン年代」は「ゆるふわクラウド」の風潮と共に幕を開けたと考え、また機会があれば更に各分野別の具体的事象と関連付けつつ「ふゆふわクラウド」な感じで続けて行けたらと思っているので、以後お見知りおきを。(工藤伸一)
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社会 2010年09月15日 13時00分
“Can not”の汚名返上? 「必ず最後にKANは勝つ!」〜民主党代表選で菅直人氏が小沢一郎氏に勝利
9月14日(水)午後に行われた民主党代表選の国会議員投票は、ネットやテレビで生中継され、「ニコニコ生放送」では平日昼間にも関わらず開票前から10万人を超えるアクセスがあり、国政のトップに立つ与党代表に寄せる国民の期待の強さを反映する大盛況ぶりでした。 党員・サポーター・地方議員による郵送投票の集計は既に済んでおり、国会議員投票の集計直後に合算された結果は、菅直人氏721ポイント、小沢一郎氏491ポイント。 党員・サポーター/議員いずれの票も菅氏がリードし、民主党代表・再選を果たしました。 神妙な面持ちで進行を見守っていた両氏でしたが、結果を受けて登壇した折には笑顔で握手を交わし、一騎打ちの幕引きを労いあっていました。 ところで菅氏は、7月に大敗した参院選で指揮をとっており、与野党の議席多数派が衆参で異なる「ねじれ国会」を招いた面もありますが、その選挙戦の遊説中、米オバマ大統領の「Yes, We Can!」をもじった「Yes We 菅!」を合言葉にしており、ネット上では「名前から考えたら、“Can not” が妥当」との辛辣な意見も寄せられていました。 けれど20年前にミリオンヒットを飛ばしたシンガーソングライター・KAN『愛は勝つ』の歌詞をもじれば「必ず最後にKANは勝つ」ことを実証して見せたとも言えるわけで、その政治的求心力は認めざるをえないところでしょう。 とはいえ低迷する景気への打開策などを巡り、国の行く末を不安に思う声も巷からは聞こえてきます。 その世相を反映してか、代表選の行われた東京都内は、集計の途中から突然の豪雨に見舞われました。 後になって「やはり Can not だった」と落胆されることのなきよう、代表選再選に甘んじることなく国政のあらゆる面において国民をリードし、今後も勝ち続けられる “Can” であってくれることを切に願いたいものです。(工藤伸一)
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