初日9月23日(木)の催しは2つ。初めに阿刀田高さん(日本ペンクラブ会長・直木賞作家)の小説『闇彦』(新潮社)を松平定知さん(元NHKキャスター・朗読を中心に活動する「ことばの杜」所属)が朗読。脚本演出は吉岡忍さん。加藤純さんの絵画を使った四位雅文さんの映像をバックに、植松葉子さんの横笛と古賀裕己さんの小鼓にて演奏される森ミドリさん作曲のBGMを交えて進行。
日本神話の海彦山彦の他に死を司る闇彦がいてギリシャ神話のハデスと繋がるという壮大な仮説が、小説家の主人公と謎めいた女性の交流とともに展開する物語。朗読後に阿刀田さんも登壇。説話と男女を巡る環境を意図して書かれ、朗読は長編小説の要約のため原作では更に精緻な理論が構築されていることなどを語る。
次にサラ・パレツキーさん(米国女性作家)の自伝的エッセイ『沈黙の時代のなかで書く』(早川書房・山本やよいさん訳)を、山根基世さん(元NHKアナウンス室長・ことばの杜代表)が朗読。途中に茂本ヒデキチさんのライブ描画も。演奏は定成誠一郎さんと定成淡紅子さんによるパーカッション。
人種差別や性差別、9.11以降の政治的環境と抗戦してきた作者の生い立ち、執筆を支えてくれた架空の人物アグネス、自作小説の主人公・女性私立探偵
V・I・ウォーショースキーについて語る内容。朗読後にパレツキーさんも登場。政治的内容を含む初講演では豪雨の中を駆け付けた聴衆が喝采してくれたとの話は、当日の天候にも重なり不思議な縁を感じさせた。
ペンクラブ会員向けの同大会だが、25日までのフォーラムや26日の開会式、並行して行われるセミナー、朗読会は一般公開される。事前予約は終了しているものの、空席のある回は当日受付もあるとのこと。(工藤伸一)