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出てこい! ニッポン埋蔵金 発掘最前線(13)

 日本の埋蔵金伝説のベストテンに入る『前野小平治の埋蔵金』を、このまま眠らせておくのはもったいない。一部が見つかっているというウワサはあるが、まだ大半は地下のはずだ。数千両の小判や外国金貨、宝石類の時価総額はざっと見積もって数百億円。これにいま一度スポットを当てようと、名古屋テレビ『ドデスカ!』の取材スタッフと共に、筆者は昨年の8月、愛知県知多半島の内海を再訪した。

 最初に会ったのは『内海女将さん会』の3人。小平治のキャラクターを創案したり、小平治御膳というもてなし料理を作ったりして、埋蔵金伝説を生かした町おこしに取り組んでいるグループだ。
 だが、女将さんたちは埋蔵金伝説そのものについては詳しくない。そこで、地区の区長さん宅を訪ねると、小平治の埋蔵金伝説について書かれた小冊子を見せてくれた。まとめたのは元町長の内田恒助さんだ。それなら本人に話を聞くのが早いと訪ねていくと、幸い在宅で、人の好さそうな元町長から、思いがけない話を聞き出すことができた上、埋蔵金に一歩も二歩も近づくことができたのである。
 元町長は、幕末近くに前野家の後援を受けて廻船業を創業した内田家の子孫で、同家は明治になって海運が衰退すると、酒造業に転身した。その事業もすでに廃業してしばらくたつそうだが、酒蔵があった場所は、もともとは前野家の土地で、古地図にも『前野小平治控之地』と書かれている。現在は空き地になっているという。

 実は、過去に埋蔵金を掘らせてくれと交渉にやって来た人物がいるとのこと。筆者はそれが誰であるか、だいたい見当がついた。昭和の終わりから平成の初めにかけて、金に飽かして全国の有名伝説地を掘りまくったY氏だろう。
 「もちろん断りましたよ」という元町長の言葉に一安心。そして、われわれが調査したい意向を告げると、「地元のテレビのためなら」と、快諾してくれたのだ。
 元町長の案内でそこへ行ってみると、夏草に覆い尽くされた広い空き地があった。川に面した部分が約40メートル、奥行きは30メートルほど。河口から300メートル強といったところか。川幅は十分にあるので、千石船も着岸できたのだろう。古地図にある“控之地”という表記から考えて、前野時代に建物などはなかったと思われる。しかし、重要な土地だったに違いない。

 果たしてその地下に何か眠っているのだろうか。筆者は今回も持参したドイツ製の高性能探査機を当ててみることにした。炎天下、リポーターのヨーヨーヨースケ君と一緒に、腰の近くまで伸びた夏草を踏みしだいて歩き回った。
 1時間が経過してもこれといった反応がなく、半ば諦めたとき“ブイーン”という激しいビープ音が鳴り、胸に吊るした探査機本体の液晶画面に、一瞬『99』の数字が表示された。
 「貴金属の反応だ!」
 この器械は、捉えた金属の種類を数値で表す。あくまでも目安だが、50以下なら鉄やアルミなどの卑金属、70以上なら銅、80以上が銀、90を超えると金の可能性が強くなる。それまでの反応はすべて50以下で、どうせ空き缶などのガラクタだろうと、一切無視してきたが、今度は全く違う。一気にテンションが上がって、筆者はヨースケ君と共に本気でショベルを振るった。
 草の根を払っても何も顔を出さない。かえって有望だ。そして、慎重に30センチほど掘り下げたところで、ショベルの先に何かがガチッと当たった。刃先を深く入れてグイッと掘り起こすと、現れたのは光沢のある金属のリングだった。考えもしなかった形状の物体で、ずっしりと重たい。鉄やアルミでないことは確かだ。

 ちょうどタイムリミットとなったところだったので、内田元町長に報告に行ったところ、最初は不思議そうな顔をしていたが、「酒蔵で使っていた道具か器械の一部かもしれないな」という見解だった。
 それが当たっていたらしく、後日、スタッフが専門家に調べてもらったところ、真鍮製のリングと判明し、その翌週から2回に分けて放送された『ドデスカ!』の中でも、そのように報告されていた。
 どうやら、探査機の感度の設定が強過ぎたようで、本来70台の数値になるところが99まで跳ね上がってしまったと思われる。失敗といえば失敗だが、まだチャンスはある。旧前野邸だけでも4千坪は優にあったそうだし、財宝を隠したのは邸内とは限らない。せっかく再調査の機会をもらったことだし、近くリベンジを試みたいと思っている。

トレジャーハンター・八重野充弘
(やえのみつひろ)=1947年熊本市生まれ。日本各地に眠る埋蔵金を求め、全国を駆け回って40年を誇るトレジャーハンターの第一人者。1978年『日本トレジャーハンティングクラブ』を結成し代表を務める。作家・科学ジャーナリスト。

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