誰が言ったか、そんな言葉に何となく踊らされ、シブシブ重い腰を上げ、ダイエットを始めたというお父さんも多いだろう。
まさに世の中はダイエットブーム真っ盛り。今年上半期のベストセラー実用書部門をのぞいてみても、ダイエットやアンチエイジング関連本が占める割合は半数にものぼる。もはやダイエット=女性という概念は完全に拭い去られ、体重や食生活に気を配らない“メタボ中年おじさん”などは、まるで『ダメおやじ』のレッテルが貼られるような風潮になっている。テレビCMでも連日、有名タレントが盛んに身体の引き締めや“脂肪燃焼”を勧めているほどだ。
しかしその一方で、安易なダイエットで身体を壊したり、悪徳業者にだまされて高額な健康補助食品を買わされるなどの被害も急増している。そもそも、それでなくても不規則な生活が多いサラリーマンなどは、きちんとしたスケジュールに沿って計画を立てる事すらほぼ不可能に近い。そんな状況の中でついつい「これを試せば(食べれば)痩せられます!」の魔法の言葉にだまされてしまうのだ。
都内の貿易会社に勤めるSさん(45歳)は、大学時代はラグビー部に所属し、筋肉質の理想的な体型を維持していたというが、最近は中年太りが始まり、当時よりもプラス15キロの95キロにまで体重が増加してしまったという。
「私の場合、身長(180センチ)もあるので、自分ではそんなに太っているつもりはなかったんですよ。ただ、ある程度年齢を重ねると自然に血糖値や血圧も上がるでしょ? 特に異常が出ているわけではありませんが、少しくらい痩せた方がいいかなぁと思いまして…」
Sさんが始めたのは、ある通販業者のダイエット食品。しかし、これがとんでもないシロモノだったという。
「最初はサンプルなどで、無料で試せるんですよ。外見はシリアルのようなものですね。しかし、実際にこれを食べ続けるには、年間45万円もの金額を出さないといけない。途中からこりゃダメだと思ってやめようとしたら、それから毎日のように電話やメールがやってくる。しかも、その食品だけで栄養は万全とうたっておきながら、肌荒れや体調不良を起こすことが頻繁に続くようになり、自分でも怖くなりました。もう二度とごめんです」
実際、Sさんのように悪徳業者にだまされた人は枚挙にいとまがない。国民生活センターにも同様の相談が相次いでいる。
「○○に効く、○○だけでOK、などの表現は薬事法違反になります。最初はモニターを募集して格安で商品を購入させ、専門家のアドバイスも受けられるとしながら、徐々に連絡が途絶え、最後は高額の商品だけが残るというパターンにも注意が必要です」(都内消費者センター)