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酒井法子とジョン・ライドン

 酒井法子(39)の自叙伝『贖罪(しょくざい)』は、5万部程度と売上が良くないそうである。

 そもそも活字本が売れないと言われている中で万単位なら問題なさそうに思えるが、ヒット曲『碧いうさぎ』がミリオン寸前までいったことを考えると、やはり少ない気はしてくる。ちなみにウィキペディアの「酒井法子」の項目ではミリオンセラーとなっているが、曲自体の項目では99.7万枚となっている。出荷枚数は100万枚を超えたものの、事件後の発売中止措置によって、実売数は超えられなかったということだろうか。

 2009年11月25日に覚せい剤取締法違反(所持)により、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決が確定。その約1年後に発売された『贖罪』は、あまり反省が感じられない内容と批判もされたが、アイドル絶頂期の話やプライベート写真も多く、ファンにとっては嬉しい本。2月3日には電子書籍版も発売されたそうなので、後ほどまた好意的なレビューでも書いてみようかと考えている。

 実は最も好きなアイドルが誰か聞かれたら、酒井法子ということになるけれど、それをどう説明すべきか迷っちゃうような状況に来ていて。けれどものりピーが、変な男と結婚したりシャブ中になったりしても、アイドルはあくまでもアイドルというような思いはあって。ともすれば、むしろ堕ちていってくれた方が、より神聖が増すようにさえ思えるくらいで。

 何というか、世の災厄を一身に背負うがゆえに、崇拝に値する偶像というか。つまり簡単に騙されちゃうくらい、ピュアなんだ。本当の清純派は、汚れていくのが、当たり前で。なぜなら、汚れないでいられるほど、器用じゃないから。その不器用さこそが、アイドルの資質なのである。

 だから汚れてしまう前に人気絶頂の最中で、事務所ビル屋上から投身自殺した岡田有希子(享年18)なんて、まさにアイドルの鏡。パンクロックバンド「セックス・ピストルズ」の解散直後に、恋人ナンシーの後を追うようにして変死したシド・ヴィシャス(享年21)なんてのもそうだ。

 バラエティ番組に出てくる変なオッサンとして惨めに醜態を晒すことで、自らを偶像破壊して生き残るジョン・ライドン(55)の方が、僕は好きだけど。岡田有希子はシドで、酒井法子はジョンだろうか。どちらも清く正しく美しい、パンクやアイドルの模範だ。

 そしてパンクとアイドルは技術の放棄という点においても似ている。むしろパンク的な上手さや、アイドル的な上手さというものがあって。ところがそれを維持できない。それも含めてパンクであり、アイドルというかさ。つまり人生そのものなんだ、パンクもアイドルも。

 それを事務所やファンやマスコミが利用して、飯のタネやらオカズやら玩具にしているわけで、責任を負うべきなのは、事務所やファンやマスコミの方だ。アイドルの運や才能や魅力をエサにして利益を稼いできた贖罪の意味もあって、今度は逆にアイドルを叩くという側面もあるんだろうけれど、しかしそれじゃ事務所やファンやマスコミが追い詰めた、アイドル当人への贖罪を果たしているとは言えないんじゃないだろうか。

 芸能界に蔓延する薬物汚染も、本当の加害者はブローカーであって芸能人は被害者だったりもする。だから多少なりとも擁護せざるを得ないはずなんだ。そしてそれは、薬物と手を切れるような方向性のものであることが、望ましい。とにかく入手ルートが殲滅されない限り、不幸の連鎖は続いてしまうことだろう。

 のりピーは2月14日に40歳の誕生日を迎える。「バレンタインデー生まれ」なところも正統派アイドルという感じだけれど、だからといってホワイトデーに白い変なものを送っちゃ、ダメ。絶対!(工藤伸一)

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