まず10月7日にRIZINが予告してから注目されていた“皇帝”エリミヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)の日本ラストマッチの相手が、かつてPRIDEなどで活躍したクイントン・ジャクソン(アメリカ)に決定したことが発表された。
“ランペイジ”の相性で日本でも親しまれていたクイントンは、アメリカのローカルイベントKOTCで活躍して注目を集めると、2001年に桜庭和志の相手としてPRIDEデビュー。たぐいまれな怪力と、首からチェーンをぶら下げて遠吠えするパフォーマンスで人気を博した。
PRIDEでは、チャック・リデル、イゴール・ボブチャンチン、ヒカルド・アローナといった難敵に勝利。ヴァンダレイ・シウバとの2度にわたる戦いは、いずれも両者死力を尽くした激戦となり、PRIDE史上に残る名勝負となった。PRIDE以降はUFCで、ヴァンダレイにリンベンジを果たし、ダン・ヘンダーソン、リョート・マチダを破るなど、中量級の中心人物の一人として活躍。2013年からはベラトールに参戦し、石井慧、キング・モーから勝利。2018年9月にはヴァンダレイとの4度目の対決を制している。日本での試合は約14年ぶりとなる。
「このカードは1月のLAでの大会で行う予定だったが、私は日本でやるべきだと思い会社内で議論をして通した」
ベラトールのスコット・コーカー代表は、興奮した口調で今回のカード決定の経緯について語った。コーカー代表は元K-1USAの社長を務めた人物。日本の格闘技に対するリスペクトの気持ちが強いことが会見を通じて伝わってきた。RIZINの榊原信行CEOによるとコーカー代表は「この試合はリングでやるべき」とバックステージで話していたそうで、ベラトールのケージではなく、リングで行われることになりそうだ。
ヒョードル対ランペイジはRIZINが協力する形で、ベラトールの日本初進出大会として開く『BELLATOR JAPAN」で対戦する。詳細はまだ決まっていないが、大会開始時間を正午に設定し、アメリカのベラトールファンも楽しめる時間帯に設定した。会見ではヒョードル、ランペイジがお互いを「ファンが喜ぶような試合をする選手」と称えた。娘の誕生日が同じ12月29日という事実も発覚。会見は終始和やかなムードだった。
コーカー代表は、ベラトールがヒョードルと3試合契約を結んだことを明らかにした上で、「今回の試合が引退ロードの第1弾。第2弾はヨーロッパで、最後はロシアのモスクワで行いたい」とした。ヒョードルは「最高に美しい試合を見せなければいけない」と語り、日本での有終の美を飾ると誓った。榊原CEOは「アメリカでのギャランティーを考えると、今のRIZINでは実現できなかったカード」と、コーカー代表と両選手の英断に感謝している。
「PRIDE時代は階級が違ったので、実現できなかったカード。ヒョードルに胸を躍らせたファンには見にきてほしい。タイムスリップを感じて感激してもらいたいですね」
PRIDE時代に現場を仕切っていた榊原CEOは、感慨深げな表情を浮かべながらこのように話していたが、榊原CEOが一番タイムスリップに浸っているのかもしれない。2000年代前半に一大ムーブメントを巻き起こした日本の格闘技ファンがたまアリに再結集する場を作ってくれたベラトールには感謝するしかない。
(どら増田)