「球種が少ないのが弱点だったからね。キャンプの時点で、先発でやっていくのは難しいとの評価が圧倒的となり、首脳陣は中継ぎに戻すタイミングを探していました」(同)
原監督は山口を呼び、自ら再転向を告げた。救援投手陣が手薄となり、今回の配置換えは当然の流れだった。しかし、山口は昨年オフの先発挑戦要請を意気に感じており、「伝え方を間違えれば、モチベーションを下げてしまう。先発で通用しなかったから中継ぎに戻されたと思うようだったら、山口の今後に影響してしまう」と、首脳陣は懸念していた。
原監督はタイミングも見計らっていたようである。漏れ伝わってくる限りでは、原監督は「クルーン不在」による投手陣の危機を「救援再転向」の口実にしたそうだ。
10日の中日戦での登板は“先発投手としての思い出作り”でもあったわけだ。
「山口も原監督の説明に納得していました。クルーンが復帰してきても、山口は救援をやることになるでしょう」(同)
山口の救援専念は選手の総意でもあった。実際、こんなシーンが見られた。
藤井秀悟が先発した4月6日(阪神戦)、金本知憲外野手に逆転2ランを喫している。その金本を打席に迎える際、捕手・阿部慎之助はマウンドに向かっているが、自軍ベンチを一瞥している。6回裏の途中だが(5回3分の1)、「今日の藤井はここが限界」と思ったのだろう。しかし、救援投手の駒不足で、原監督は阿部のシグナルに応えられなかった。
前回3月30日の先発でも、そうだった。藤井は横浜・カスティーヨに逆転3ランを浴びている。打線の爆発で試合には勝ったが、「打たれてから投手交代に動く」投手リレーは、山口、越智大祐の両中継ぎ投手が健在だった昨季までは見られなかった。
「先発ローテーション入りしていた西村(健太朗)が右手マメを潰し、暫くの間は投げられません。先発投手の頭数も不足がち」(ライバル球団スコアラー)
戦力層は厚いが、今季は圧倒的な強さは感じられない。選手のモチベーションを考え、言葉を選んだ原監督はさすがだが、勝てる試合を落としてまで“コンバート実験”を続けたこの序盤戦のもたつきが、後々の優勝争いに影響しないとも限らない。