中性脂肪とは、体内にある中性脂質、リン脂質、糖脂質、ステロイドの4種類の脂質。砂糖などの糖質や炭水化物、動物性脂肪などが主な原料で、肝臓で作られる。これらを多く摂り過ぎると、皮下脂肪の主成分として蓄積されるのだ。
山梨大医学部名誉教授の田村康二氏が説明する。
「人間の体が活動するとき、第一のエネルギー源となるのはブドウですが、不足すると、貯蔵されていた脂肪が分解されて再び血液中に放出され、エネルギーとして使われる。しかし、血液中の中性脂肪やコレステロールが増えすぎると、動脈硬化の危険が高まります。日本人の場合は、心筋梗塞の人のコレステロール値はそれほど高くなく、中性脂肪が高値を示す例が多いといわれています。中性脂肪が余分になり、血液中に増加してくると、動脈硬化を進める一因になります。そのため、中性脂肪の測定は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを予防するために重要。また、中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気が考えられるのです」
中性脂肪値が高い人は、その原因がだいたい自分で理解しているはず。ちなみに記者も酒の飲み過ぎだが、ある程度のコントロールはできても完全にやめるのはなかなか難しい。
そこで、ここに興味深いケースがある。
中性脂肪が300ミリグラムを超えていた鈴木純一さん(仮名・41)の場合、毎日一食、イワシが食膳に並ぶ献立を1カ月続けたところ、なんと健康診断の数値が140ミリグラムにまで下がったというのだ。
「嘘みたいな話でした。1年前の健康診断では高脂血症で、医者には『放っておくと心筋梗塞でぽっくりイキますよ』なんて脅かされたんです。酒を断ち、脂っこい料理をやめて精進料理にしなけりゃダメかと思っていたので、青魚を食べるだけで、こんなに改善するとは思いもよりませんでした」(鈴木さん)
メタボリックシンドロームが国民的関心事となった今、新たに注目されているのがEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)なのだ。
「中性脂肪の高い人がEPA、DHAを摂取すると、中性脂肪が著しく低下することがわかっています。脂肪には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある。コレステロールや血圧を上げ、肥満を招くのはバターや肉類に含まれる飽和脂肪酸で、魚の脂肪は体にいい不飽和脂肪酸なのです。その不飽和脂肪酸であるEPAと、DHAには動脈硬化の原因とされる悪玉コレステロールの生成を抑え、中性脂肪を減少させ、血液をサラサラにし、心筋梗塞、脳血栓を予防する働きがある。そもそも日本人が長寿なのも、魚を食べてきたからなのです」(田村氏)
ところが、食の欧米化によって魚離れが進み、肉食の日本人が飛躍的に増えた。青魚などよりハンバーグがいいという日本人は圧倒的に多く、おまけに運動はあまりしていない。さらに休日は疲れきって寝ていたいというサラリーマンも少なくないだろう。これでは、中性脂肪が過多になっても不思議はない。ここで、もう一度、“魚食”を見直してみてはどうだろうか。