同時に、「監督? 一度はやってみたい。プロ野球でなくとも、大学とか高校でやりたい」と将来の監督業に対する意欲も示した。「巨人や阪神のような、人気球団ではやりたくない」と笑わせたが、人材不足のプロ野球界だけに、金本監督は大争奪戦になるだろう。
肩の状態だけでなく、年齢面も考え、金本の現役引退が近づいているのは確かだ。金本監督が誕生する日はそう遠くないだろう。実際に可能性があるのはどこの球団になるのか。
「巨人や阪神のような人気球団ではやりたくない」本人は笑って否定したが、阪神が一番手だろう。人気抜群で「アニキ」の通称は阪神ファンに定着しており、まるで生え抜き選手のような扱いになっている。
「阪神ファンは金本が広島からFA移籍してきたことをもう忘れているんじゃないのか。生え抜き選手だと思いこんでるよ」。球界関係者がこう真顔で言うほど阪神ファンの支持率は高い。
しかも、ポスト真弓候補にはこれといった有力候補はおらず、ハッキリ言って人材不足だ。かつては巨人と同様に、生え抜きしか監督になれない不文律があった阪神だが、野村克也監督(現楽天名誉監督)、星野仙一監督(現楽天監督)と外様が二代続いたこともあり、現在はなんの問題もない。
しかも、03年に阪神が18年ぶりに優勝したのは、星野監督が広島からFAした金本を獲得したのが大きな要因になっている。05年の岡田彰布監督(現オリックス監督)の元での優勝も金本抜きには語れない。
「ケガをしても泣き言一つ漏らさず平然とプレー、チームを引っ張る鉄人・金本が入団したことで、阪神は常に優勝争いをできるチームになった」と星野監督が手放しで絶賛するように、ダメ虎の体質を改善した金本の功績は大だ。ナインからの信望も厚い。
ポスト真弓に頭を悩ませる阪神球団フロント首脳とすれば、現役引退しても金本を他球団に取られないように、必死にガードするだろう。阪神に次いで注目されるのは、金本が恩師と明言する星野監督がいる楽天だろう。
星野監督が阪神シニアディレクターを辞め、楽天監督に就任した時に、金本は「星野さんが阪神を退団するのは本当に寂しい」と心中を告白しただけではない。「実は一時期、他球団への移籍も考えたことがある」と、阪神球団からの移籍を考えたこともあることを明かしている。具体的な球団名は言わなかったが、星野監督が誕生した楽天であることは間違いない。
双方が認める恩師と愛弟子。この太い絆を考えれば、星野監督の後に金本監督という禅譲路線の実現性はかなりあるだろう。しかも、金本は東北福祉大の出身であり、仙台をフランチャイズにする楽天にはうってつけの人材という点もある。星野人気で沸く楽天とすれば、その後継者に名実共に文句のない大物候補の金本がきてくれれば、万々歳だろう。
もう一つ、可能性がある球団は、古巣・広島だろう。常識的に考えれば、出た球団に戻ることはあり得ない。ところが、FAで移籍したとはいえ、広島での金本人気は相変わらず高い。金本がバッターボックスに入ると、マツダスタジアムの広島ファンからは暖かい声援が送られる。
広島球団のお家の事情もある。「チーム改造をしてもらうために、野村監督には長くやってもらう」。松田オーナーはこうお墨付きを出しており、本格長期政権と言われる野村謙二郎監督だが、就任1年目の昨年は5位。13年連続Bクラスが続いている。
山本浩二第二次政権が5年連続してBクラスでようやくブラウン政権にバトンタッチした例もあるが、野村長期政権は結果が出なければ、保証の限りではない。しかもポスト野村に有力候補は見あたらない。金本が監督として復帰すれば、人気、話題性から言っても申し分ないだろう。金本が現役引退すれば、同時に監督としての争奪戦が始まる。