彼の手法に、番組のオンエア時間帯や趣旨にのっとって、落としどころとなるターゲットを決めることがある。その標的を時には陥れながら、ともに笑いを創っていくのだ。唸らせられるのは、オチ要員となった有名人がほぼノーダメージである点だ。これこそ、有吉マジックだ。
有吉の毒牙にかかった有名人は数知れず。『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)では、その後ロマンスのウワサが浮上した夏目三久アナウンサーが情け容赦なくぶった斬られた。同番組がリニューアルされた現在の『マツコ&有吉 かりそめ天国』では、久保田直子・テレビ朝日アナウンサーが深部をエグられている。『櫻井・有吉 THE夜会』(TBS系)では、準レギュラーの梅沢富美男が引き立て役だ。
ところが、『有吉弘行のダレトク!?』(フジテレビ・カンテレ系)における髙橋真麻アナウンサーだけは、一風異なる。オチ要員ならぬ、“エロ傭員”なのだ。
同番組は、誰が得をしているのかを検証するバラエティー。だったが、昨年から一新。有名飲食店の没メニューを復活させ、“スナック有吉”に遊びに来たゲストのリクエスト料理を、有吉&真麻が目の前でふるまい、トークを繰り広げる2本柱となった。そのスナックで有吉は、真麻の適応能力の高さと器の広さを光らせる。
彼女の位置づけは、「ブスで巨乳なアシスタント」。そのうえで、父・高橋英樹がゲストの回でも、平気で魚肉ソーセージを食べさせられる。その瞬間、カメラは真麻の顔面と口元をドアップでとらえる。セクシー動画を彷彿とさせたのだ。
こうなると、芸人・有吉の独壇場。仲睦まじいクッキングシーンの調理過程では突然、すりガラスが立てかけられる。有吉はその向こうで、「入れていいの?」、「(ハンバーグを)揉んでんの」、「先に出しちゃっていい?」など、ナニかとリンクする言葉を意図的に吐く。真麻が新妻になると、その“口撃”は加速。振られた真麻も、促された言葉を躊躇なく口に出す。観る者の想像力をかきたてる文言が、どんどん出てくるのだ。
3月19日のオンエアでは、ついに「早く入れて」と言ってしまう真麻。いったいナニが起こったのか。どんな料理ができあがるのか。期待と下半身は膨らむばかりだが、この回がまさかの最終回。4月からは『噂の現場急行バラエティー レディース有吉』となり、真麻は有吉の元を離れる。
ガラスの向こうで育まれたエロ夫婦の愛。もう見られなくなるのは、残念だ。
(伊藤雅奈子)