こうの史代氏による同名漫画を原作に、現代パートを織り交ぜながらストーリーが展開されている本作。放送当初こそ、榮倉奈々らの現代パートについての批判の声が見られたものの、主人公・すずを演じる松本穂香の演技力や、どことなく漂う“朝ドラ”感などが評価され、初回の平均視聴率10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)からさほど視聴率を落とさず、最新話の第4話は9.2%。ドラマの舞台となっている広島地区では初回から第3話まで20%の大台をキープしていた。
そんな『この世界の片隅に』の視聴率キープの裏には細かな演出があるという。
「すずの夫・周作を演じている松坂桃李さんですが、実は左利きとして知られています。しかし、ドラマの中の食事シーンなどを見てみると、箸を持っているのは右手。これは原作の周作が右利きというのに合わせた演出でしょうが、視聴者からは、左利きは右利きに矯正させられたことを再現しているのでは? との声も上がっています。」(ドラマライター)
現に、周作の箸遣いは少々たどたどしく、視聴者からも「箸使いが下手だと思ったら左利きなんだ。確かにあの時代は矯正されるだろうし、そこまで考えて演出してるのすごいな」「左利きの松坂桃李が右手でお箸持ってるところを含めてこのドラマが好き」といった声が上がっている。
また、原作とかけ離れていないそのストーリー展開も原作ファンからの絶賛を受けている理由のひとつ。原作では、すずの目を通した戦時中の日常の様子がどこか抽象的に描かれており、中心となっているのは市井の人々の生活。生々しい戦況が語られる場面は少ない。昭和19年が描かれた第4話では、この年の10月から本土空襲が始まるなど、戦況としてはかなり厳しい状態にも関わらず、周作の昔の恋人がすずが親しくなった遊女・リン(二階堂ふみ)だったということが判明するというストーリーが展開。原作を必要以上に脚色しようとせず、戦争をメインに描く生々しい戦争ドラマと一線を画した表現が、「原作が元になって話を作ってるところが好き」「原作をリスペクトしてる感じがあってすごくいい」と絶賛の声を集めている。
いまだ現代パートには賛否があるにしろ、視聴者すら気づきにくい細かな演出と原作と乖離ないストーリーは、原作ファンを魅了しているようだ。