「3週間以内なら、風邪をはじめとするウイルス感染によるものが大半。一般のクリニックでも対応できるし、場合によっては市販薬という手もある。ただし3週間を超えたら、呼吸器の専門医のいるクリニックか病院を受診する必要がある。大きな病気に繋がる可能性があるからです」
“大きな病気”として最も疑われるのが、喘息であり、「心筋炎」という重篤な病気だ。
心筋炎は、風邪の原因となるウイルスによる感染で生じるといわれる。ウイルスには「エンテロウイルス」、「アデノウイルス」、「インフルエンザウイルス」などの種類があるが、このうちのエンテロウイルス菌は、心筋炎に侵された心臓から50%以上の確率で検出されている。言い換えると、心臓でこの菌が増殖しているということ。これについては、岩手医科大学附属循環器医療センターの研究チームによって明らかにされ、学会にも報告されている。
同センターの関係者はこう述べている。
「心筋炎は子供から大人まで幅広い年齢層で発症します。典型的な症状は風邪症状(咳・発熱・腹痛など)や胸痛、呼吸困難、動悸など。しかし、症状が進み重症化すると“劇症心筋炎”となり、ショックや心不全、あるいは突然死を引き起こすことがあります。心筋炎の段階で早期に治療すれば4週間程度で完治しますが、劇症型まで進むと、発症後、約1割の患者さんは1週間以内に死に至るといわれます。これは、心筋梗塞の院内死亡率と同じ率になります」
また、別の専門家もこう説明する。
「長期間(5年〜10数年)にわたりウイルスが心臓に感染し、何度も心筋炎を繰り返すうちに、拡張型心筋症(心臓の収縮力が弱まり心臓が大きくなる病気)になることがある。心筋炎は軽い風邪症状で終わるものから、重症化して死に至るケースまでさまざまな現象が起きるため、油断のできない病気であることには違いありません」
元俳優・山本陽一さん(45)は現在、家業の金属加工会社を継ぎ、トラックで関西方面を元気に奔走している。しかし、芸能界を引退するきっかけとなったのが劇症心筋炎に侵されたことだったと告白している。
以前は人に負けないほど体力に自信があった山本さんだったが、ウイルス菌に侵され咳をきっかけに劇症心筋炎と診断。入院生活を余儀なくされたが、「この病気で自分は死にかけました」と山本さんは語っている。入院中のある日、咳を連発したあと突然、心臓発作を起こして息苦しく、目の前が真っ暗になったことが何度もあったという。
ベッドから起き上がれるようになったのは、入院から20日後。それから懸命にリハビリを続け、再起のために頑張った。退院後は散歩を日課とし、入院前の暴飲暴食の生活も改め、たばこや酒も止めたそうだ。
山本さんはこう語る。
「劇症心筋炎は救命率が50%。進行が早く、死んでから病名が判明する場合も多いそうです。それだけに、専門医に出会え、きちっとした治療を受けられたことは幸運でした」