この時期、有力候補が希望球団を表明するのは珍しくない。そういったキナ臭い情報は交錯していないが、藤岡には「好きな球場」があることが分かった。ズバリ、QVCマリンだという。
「8月4日、千葉ロッテとの交流戦に登板し、『投げやすい』との印象を持ったようです。マウンドの高さ、土の固さ、バックネットの光景。ホームまでの距離感も『近く感じ、投げやすい』と話しており、彼のフィーリングにも合うらしく、この球場が好きだと話していました」(大学球界要人)
この千葉ロッテ二軍との対戦で、藤岡は3回を投げ、「被安打0、与四球1、大三振3」と好投している。秋季リーグ戦前の調整登板だったため、自慢のストレートは140キロ台しか出ていないが、テンポ良く投げ込んでおり、千葉ロッテ関係者が改めてその実力を認めていた。
千葉ロッテはこの交流戦の行われた時点で、すでに「1位・藤岡」を表明していた。調整段階でも結果を残せた要因が「球場との相性の良さ」と分かれば、是が非でも「獲りたい!」と思うだろう。
しかし、1位指名は入札・抽選制…。千葉ロッテは10月20日、ドラフト候補のリスト作成のスカウト会議を行い、「1位・藤岡」を確認しているが、当然、他球団の1位リストから藤岡の名前は消えていない。一時期、その藤岡の入札には、他選手の1位表明をした球団以外の「9球団」が参加する可能性も伝えられていた。千葉ロッテ同様、最終決定に近いスカウト会議をどの球団も開いており、同日時点で、藤岡の1位入札の可能性があるのは、千葉ロッテと5球団。楽天、オリックス、埼玉西武、北海道日本ハム、横浜。いや、横浜は下りるかもしれない。
「白鴎大の好捕手・岡島豪郎を一本釣りする可能性も出てきました。強肩で、捕手をさせるのがもったいないくらいの俊足ですよ(笑)。同志社の小林誠司捕手に対しても、捕手難のチームが『外れ1位』で指名する可能性もあります。2人とも好捕手です。守備能力では能力は甲乙付けられませんが、打撃力は岡島クンの方が上かな…。横浜が競合を嫌い、単独1位を検討しているとの情報もあります」(在阪球団スカウト)
仮にこの情報通り、横浜が入札での競合を嫌った場合、藤岡への入札はパ・リーグ球団だけになる。つまり、千葉ロッテが抽選クジを外した場合、「大変な苦手投手」をつくってしまうのだ。1988年のドラフト会議で巨人は川崎憲次郎の抽選に外れ、後年の『巨人キラー』を輩出させた。その悲劇がQVCマリンを舞台に繰り返されたら…。
前年は斎藤佑樹の1位指名を早々に表明し、抽選で外れた。10勝確実の左腕先発を得るか、それとも難敵を作ってしまうのか? 1位の抽選クジには西村徳文監督が参加する予定だという。責任重大だ…。(一部敬称略/スポーツライター・飯山満)