中島は昨年オフ、ポスティングによるメジャー挑戦を訴えたが、球団がそれを拒否。両者は一時期、「(入札を認めると)言った」「言わない」の“水掛け論”にまで発展したが、なんとか、2011年度の契約更改までこぎ着けた。しかし、その契約更改後の会見でのこと。中島は「フロントが、来年はポスティングを真剣に考えると言ってくれました」と公言。わざわざ会見でそう伝えたのは、「今度は認めるとは言っていない」とフロント幹部に反論させないため、マスコミとファンを“証人”になってもらいたかったからだろう。
プロ野球解説者の1人がこう続ける。
「今季、3年目の浅村(栄斗)を起用したのは、中島がいなくなった後を見越してのこと。球団もそれなりの覚悟はできるといると思います」
しかし、中島に逆風が吹き始めている。今回も西武はポスティングによる米挑戦に「待った」を掛けるかもしれない。
「今オフ、遊撃手の補強を考えている米球団はジャイアンツ、メッツ、レッズ、カージナルス。他の大物遊撃手ですが、『メッツのホセ・レイエスがFAになる』との見方が支配的で、そのレイエス獲得に失敗したチームが中島、ソフトバンクの川崎(宗則)の獲得を検討するのではないでしょうか」(米国人メディア陣の1人)
ポスティングに参加する米球団は確実に現れそうである。
遊撃手を補強したいこの米4球団だが、メッツ以外は「今オフの補強資金が潤沢ではない」と聞く。レイエスの年俸は1100万ドル(契約更改当時のレートで約9億3000万円)。中島の推定年俸は2億8000万円だ。レイエスがFAになる時期に合わせてポスティングを表明し、“割安感”をアピールする方法も考えられるが、レイエスの去就が決まってから、「3割20本の好打者」として売り込みを掛けるかもしれない。落札後の交渉を有利に進めるため、中島サイドはポスティングを表明する時期を見極めることになる。
しかし、西武球団は今回もポスティングには積極的になれないという…。
「中島の落札金? 西岡(剛=ツインズ)の成績が参考にされると思われます。米スカウトはまだ日本人遊撃手に対し、懐疑的です。西岡は遊撃、二塁の両方の守備に着きましたが、辛辣な評価もないわけではありません。日本人内野手で守備力を評価されたのは、今のところ、井口(資仁)の二塁守備だけです」(前出・同)
中島獲得に「高い落札金を払いたくない」というのが、米球界側の本心のようだ。西岡の落札金は533万ドル(約4億2000万円/当時)。契約は3年925万ドル(約7億4000万円)だった。米メディア陣の1人は、中島の落札金をこう予想する。
「中島はこちらでも評価されている選手の1人です。ただ、西岡は首位打者、121得点をマークしたシーズンのオフに米挑戦しました。中島の成績は安定していますが、インパクトに欠けます。落札金で西岡を上回ることはないと思いますよ。具体的な金額? 300万ドル台でしょう」
1ドル80円として、2億4000万円といったところか…。「落札金が西岡以下になる」との現地の予想は、すでに西武側も掴んでいるという。
「300万ドル? 西武が2億円台で3番バッターを手放しますかねえ…。でも将来、海外FA権を行使されたら、補填金はゼロです。非常に厳しい選択です」(球界関係者)
西武は松坂大輔を見送った際、約60億円のビッグマネーを得た。中島は今年6月に国内FA権を取得したが、メジャー挑戦が可能となる海外FA権は早くても「来季」。西武球団としては「せめて西岡と同じか、それに近い金額」を当て込んでいたのではないだろうか。3億円以下でも『落札金』を取るか、それとも、『戦力』として中島を残留させるか、非常に迷うところである。
「中島の落札金が西岡を下回るとの情報は球団も掴んでいます。最終結論はこれからですが、3億円以下なら手放さないとの見方も確かにされています。ドラフト会議で有望遊撃手を指名できたら、中島を見送るとの情報も交錯していますが」(球界関係者)
西武は「ポスティングにかける」とは言っていない。「真剣に考える」と言っただけだ。「真剣に考えた結果、かけられない」と言っても、嘘をついたことにはならない。しかし、そういう姑息な対応をすれば、中島はもちろん、他西武選手もフロントに対する不信感を強めるだろう。今年も西武のオフは大揺れとなりそうだ。
※メジャー関連のカタカナ表記は『メジャーリーグ選手名鑑2011年版』を参考にいたしました。