「この日の会議は高校を中心に指名候補を約30人に絞り込んだとは聞いています。大学生、社会人の絞り込みは次回に持ち越されたそうです」(在京球団関係者)
日本ハムのドラフトが注目された理由は、主に2つ。同球団は奇しくも、東海大グループ校卒のスカウトがいない。したがって、今秋のドラフト会議の目玉で、原辰徳・巨人監督の甥っ子・菅野智之投手(東海大)を指名したとしても、「その後のトラブル」に発展する可能性はない。何のしがらみもないため、『菅野強行指名』が可能な唯一のチームとも位置づけられていた。
また、今オフ、エース・ダルビッシュのポスティングによる米挑戦が既成路線のように伝えられている。「日本ハムが即戦力投手を狙ってくれば、ダルビッシュの入札は確実」なる見方もされており、メジャースカウトもその動向を探っていたのだ。
在阪球団スカウトの1人がこう言う。
「余所の球団なので一方的な予想でしかありませんが、有望高校生の視察は、地方大会で終わっているはずなんです。スカウトは甲子園大会も視察しますが、あくまでも確認であって、ここで新しい情報を得ようなんてスカウトは1人もいません」
この時期、有望高校生に関する情報整理のためのスカウト会議が開かれるのは珍しいことではない。だが、日本ハムは同会議で「30人前後に絞り込んだ」とされており、他球団はもっと少人数への絞り込みを終えている。むしろ、指名候補者リストを“拡大した”のではないだろうか。
一部メディアに対し、日本ハム・山田正雄GMは「競争は覚悟しなければならない」とコメントしていた。同会議直前の発言であり、千葉ロッテが1位指名を表明し、阪神なども熱視線を送っている「藤岡貴裕投手(東洋大)を指していたのではないか?」との予想もされていたが…。
藤岡投手は150キロ強の速球で押すだけではなく、変化球と緩急を織り交ぜた技巧派のピッチングもできる。しかも、左腕投手であり、「菅野よりも実戦向き」と評するスカウトもいるくらいだ。ダルビッシュを喪失するとなれば、日本ハムは是が非でも即戦力投手が欲しい。いや最低でも、将来のエース候補として、高い素質を持った高校生投手を指名しなければならない。
「藤岡クンの競合・抽選に参加するとなれば、『外れ1位』のリスト作りも行わなければなりません。でも、今年は即戦力投手が少ないので、『将来性』で高校生の指名にまわる球団も多いと思いますよ。日本ハムは競合・抽選に外れ、さらに数少ない即戦力投手を他球団に指名された場合も想定し、高校生のリスト作りを念入りに行ったのでは?」(前出・在阪スカウト)
日本ハムのスカウト会議を巡る情報を整理すると、やはり、ダルビッシュの喪失が念頭にあるようだ。
昨年はドラフト会議直前で、山田GMが斎藤佑樹の指名に一転させた。今季のチーム好調の勝因は、ダルビッシュ、武田勝、ウルフ、ケッペルの先発4投手と、救援陣の安定だろう。しかし、「ウルフとケッペルは出来過ぎ」との見方もあり、たとえダルビッシュの米挑戦が見送られたとしても、先発投手の補強は必須事項となる。
「斎藤佑樹? 営業的には大満足でしょうが、戦力としては及第点に届くかどうか、ギリギリのところ。来季はもっと活躍してくれるとは思いますが、ダルビッシュの後継者として、ローテーションの主軸を託せるかどうかは、誰も太鼓判を押せません」(プロ野球解説者)
斎藤が大活躍してくれれば、スカウト会議も混乱しないで済んだのだが…。