愛する夫のため、揺るぎない誠実さと献身で妖魔に立ち向かう佩蓉を演じるのは、本作で第16回北京春燕奨・最優秀映画主演女優賞を受賞したヴィッキー・チャオ。
対立する役柄を演じる中国二大女優の迫真の演技が、それぞれの想いの強さと切なさを見る者に問いかける。二人の間で翻弄され、苦悩する王生役には、中国一の美形スター チェン・クン。妖魔の正体を暴くため戦う元将軍・龐(パン・)勇(ヨン)役のドニー・イェンが繰り広げるアクションシーンの見ごたえも十分である。監督は香港のヒットメーカー、『メダリオン』『剣客之恋』のゴードン・チャンが務める。
本作は“怪奇ロマンス”というこれまでにない幻想的な世界観の悲恋物語が支持され、中国国内で『レッドクリフ part1』に次ぐメガヒットを記録。2009年度米アカデミー賞に香港代表作品として出品された。
原作は中国の清代に蒲松齢によって書かれた短編小説集「聊斎志異」の一編。1989年には同書所収の「聶小倩」が『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』として映画化され大ヒットした。日本では芥川龍之介や太宰治などに影響を与えたと言われる怪異譚「聊斎志異」からまたひとつ、胸がはり裂かれるような愛の物語が生まれた。
【インタビュー】
■狐の妖魔・小唯(シャオウェイ)演じる:ジョウ・シュン■
Q.撮影で苦労したシーンについて。
A.“化けの皮”を剥ぐシーンの撮影は大変でした。特殊メイクに6時間もかかるんですよ。髪の毛は1本ずつシリコンの“皮”に植えていきます。出来上がったマスクを被るのではなくて、顔に貼り付けたシリコンに直にメイクするので6時間ずっと動けませんでした。それなのに映画ではたった3秒のシーン。…一度間違って破ってしまうと6時間もかかるのに(笑)。
Q.どうして小唯(シャオウェイ)は妖魔の姿を見せたのだと思いますか?
A.好きになった男性が心から妻を愛していると分かって正体を現したんです。それでも彼を恨んではいなかったと思うわ。何でも自由に操れると思っていた妖魔・小唯は、愛情も手に入れる自信があったけど、結局思い通りにはいかなかったの。
Q.あなた自身は“愛の達人”だから、恋愛に苦労しないのでは?
A.愛の達人? いいえ、それは誤解ね。現実の私もそうだし、私が演じた小唯は特に、本当の愛を知る道の途中にあるのだと思います。
■貞淑な妻・佩蓉(ペイロン)演じる:ヴィッキー・チャオ■
Q.大きな目がチャームポイントのあなたが演じた佩蓉(ペイロン)は、夫が魅了されつつある女性の正体が妖魔であることを最初に見抜く“慧眼”を持った聡明な妻でしたね。
A.“聡明”というよりも危険なことに対して“女の勘”が働いた、というのかな。女は夫に近づく女性を常に疑うものです(笑)。根拠がない場合もありますけど、佩蓉は具体的な事象から判断しています。女としての危機を感じたので、用心深くなったんですね。
Q.今回の演技はこれまでと比べていかがでしたか?
A.苦労しました。感情表現の面で毎日自分の力不足を感じ、幸せな役柄ではないので気分も落ち込んで…。だけど、監督もスタッフも慰めてくれないんです。皆さん経験豊富なベテランの映画人ですから、むしろ「沈んだ雰囲気が役に合ってるね」なんて言われていました(笑)。
Q.チェン・クンとは初共演ですが、大学の同級生なので演技しやすかったですか?
A.笑ってしまうこともあったけど、ほとんどはうまくいきました。寒い中での撮影だったので、チェン・クンはカットがかかるとすぐに服を着たがるんですよ。私も服を着せるのを手伝いました(笑)。仲がいい分、照れくささもあるので、それは撮影の邪魔になったかもしれませんね。
■チェン・クン■
Q.“王生(ワン・シェン)”という役柄について。
A.この役はとても難しくて…。まず、王生が何故2人の女性から愛されるのかを考えようと思い、台本が無いから監督に聞きました。どう演じていったらいいかも分からないし、「最後にジョウ・シュンとヴィッキー・チャオのどちらを選ぶんですか?」と。そしたら監督も「分からない」って。撮影しながら物語を作っていくんです。台本の無い撮影は初めてだったから戸惑いました。監督は「何も決めなくていい。とにかく進もう」と言うものの、きっとヴィッキーも同じように戸惑っていたんじゃないかな。
Q.撮影現場でのエピソードについて。
A.現場ではスタッフの誰もが大変な苦労をしていますが、スクリーンには映りません。たとえば若い俳優の背中を踏み台にして飛び上がるシーンがありました。躊躇している僕に、彼は「思い切り踏んでください」と言って、テイクの度に毎回背中を丸めて構えてくれる。僕たちが華麗に立ち回るシーンの陰には、彼のような人たちの努力があります。この映画の撮影では、自分自身の力不足を感じることが度々あったんです。でも、とても努力したつもりなので、今ではこれまでの出演作と比べてみても、最もいい演技ができたと思えるようになりました。
【『画皮 あやかしの恋』ストーリー】
秦から漢にかけての時代。将軍・王生(ワン・シェン)は合戦の最中、盗賊に捕えられていた、若く美しい女・小唯(シャオウェイ)を救出し、故郷に連れ帰る。愛する妻・佩蓉(ペイロン)に事情を話し、身寄りのない小唯を家に住まわせることに。しかし、小唯は人間の姿をしたキツネの妖魔だった。王生に恋をした小唯はさまざまな妖術で彼を幻惑し、佩蓉から妻の座を奪おうと企む。時を同じくして、町では人の心臓がえぐりとられる残忍な殺人事件が連続する。小唯の内に言い知れない不気味さを感じとった佩蓉は、彼女が魔物ではないかと疑うが…。
『画皮 あやかしの恋』
出演:ジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、チェン・クン、スン・リー、チー・ユーウー、ドニー・イェン
監督・製作:ゴードン・チャン/プロダクション・デザイン:シュー・リーコン
撮影:アーサー・ウォン
美術:ビル・ルイ
アクション監督:トン・ワイ
音楽:藤原いくろう
提供:マクザム、パルコ、テレビ東京メディアネット
配給:太秦
2008年/シンガポール・中国・香港/中国語/103分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSR
原題『画皮・Painted Skin』/字幕翻訳:島根磯美
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公式HP:www.gahi-movie.com
8月4日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー