DDTの客層は約6割を女性ファンが占めており、この日もいわゆるプ女子(プロレス女子)たちの黄色い声援が、出場した各選手に絶え間なく送られていた。
DDTといえば女性アイドルユニットとのコラボレーションが度々話題になっていたが、高木三四郎社長は「この1年間で女性ファンの率がグッと高くなった」と分析。昨年11月6日に新木場STUDIO COASTで開催された音楽イベント「DDTフェス2016 supported by ナタリー」では、女性アイドルの出演率を下げて、人気男性アイドルユニットDISH//が出演し、“ゲイレスラー”男色ディーノと一戦を交えてDISH//を応援している女性ファンを熱狂させた。
またこのフェスに合わせる形で、昨年の5月には、なかば強引的に? 高木社長がDDTの選手からアイドルユニットNωA(ニューレスリングアイドルの略でアイドルは片仮名の「ア」から取ったとのこと)を結成することを発表。メンバーには大石真翔、勝俣瞬馬、MAOの3選手が選ばれた。サウンドプロデュースには、DDTと幾度もコラボレーションをしてきたアップアップガールズ(仮)も手掛けているmichitomoが担当。作詞は勝俣が書き上げ、リーダーに就任し、昨年8月の両国国技館大会で会場限定ながらデビュー曲『ネバギバ☆I LOVE YOU』を発売。11月のフェスにも参加すると、今年の1月には、作詞を勝俣、作曲をMAO、振り付けを大石が担当した2ndシングル『Going my ωay!!!!!〜キミはひとりじゃない〜』を発売し、シングル2枚の売り上げが好調だったことで、NωAはプロレスラーとアイドルユニットの“二刀流”の道を本格的に歩みだした。
この日行われた大会では、会場が大物アーティストのライブの聖地、さいたまスーパーアリーナということもあり、オープニングマッチのKO-D6人タッグ選手権3WAYマッチで、最初に登場したNωAは、満員の客席に向かって「盛り上がってるか〜い?」と呼びかけてから、『Going my ωay!!!!!〜キミはひとりじゃない〜』を熱唱するなど、入場から気合いが入りまくっていた。試合は3チーム9人の選手が入り乱れる中、NωAが得意の立体殺法で他チームをかく乱すると、最後はMAOがDDTの実力者ヤス・ウラノから大金星ともいえるピンフォール勝ちを収め、NωAとして初タイトルの奪取に成功(チャンピオンチーム以外のチームから勝利してもタイトルが移動するルール)した。
試合後、大石は「俺らに唯一足りなかったのがタイトルでした。これさえあれば何でもできる」と涙ながらに語ると、勝俣も「夢は諦めなければ実現するんだということを実感した」と笑みを浮かべ、MAOは「防衛をし続けて、アルバムを発売し、ワンマンライブをやりたい」と次の目標をぶち上げた。NωAは10日に勝俣の地元である柏のライブハウスイベントに出演するなど、音楽(芸能)活動も精力的に行っており、各地で好評を得ている。勝俣は「ベルトを巻きながらライブハウスで歌えるのは、僕たちにしかできないことなので、音楽の世界からDDTに新しいファンを引っ張って来たい」と力強く語っていた。
男子レスラーによるアイドルユニット結成はNωAが初めてではないが、リング外での活動にここまで力を入れた例はなかっただけに、目標に掲げたアルバムの作成や、ワンマンライブが実現したその先には、メジャーデビューなど未知なる世界が待っていることだろう。3選手ともにプロレスラーとしてのポテンシャルが高いからこそ、プロレスとアイドルの二刀流が成り立っていることを最後に付け加えておきたい。
DDTプロレス
20日 さいたまスーパーアリーナ 観衆10,702人(超満員)
▼オープニングマッチ KO-D6人タッグ選手権3WAYマッチ 60分一本勝負
<王者組>樋口和貞&岩崎孝樹&渡瀬瑞基 vs 高尾蒼馬&彰人&●ヤス・ウラノ<挑戦者組> vs 大石真翔&勝俣瞬馬&MAO◯<挑戦者組>
8分11秒 片エビ固め
※キャノンボール450°。樋口組が2度目の防衛に失敗、NωAが第29代王者となる。
<取材/文 どら増田>