search
とじる
トップ > その他 > 本好きリビドー(26)

本好きリビドー(26)

◎快楽の1冊
『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』 坂口安吾 岩波文庫 860円(本体価格)

 一人の作家が存命のとき、いくら優れた作品をたくさん発表していても、死後永遠に誰もが知っている存在であるとは限らない。読者たちは気分や気まぐれで次に読みたい本を選び、買う。さほど知らない作家の本は買わない。
 今なぜ、こう思ったのか。三島由紀夫の割腹自殺について、あらためて考える気持ちになったからだ。先月9月、学研パブリッシングから『警視庁重大事件100〜警察官の闘いと誇りの軌跡〜』という本が出た。今年2014年1月に警視庁は創立140年を迎えた。これを機に庁内の警察官たち4万人以上がアンケートに答えたのである。自身が捜査に関わった事件、あるいは印象に強く残っている事件を選出し、投票した。これに警察官以外の一般の人の投票も加えて、100事件が極めて重大なものとして紹介されている。
 52位が先に挙げた三島事件である。1970年11月に起きた。さて今、この事件を振り返ったとき、ショッキングな死に方をした作家は多くの人にインパクトを与え永遠不滅の存在になる、という現実を実感せざるを得ない。太宰治しかり、川端康成しかりだ。もちろん、優れた作品を残しているのは間違いないけれど、劇的な死が人々に語り継がれ、故に読み継がれているというのも事実である。
 むしろ死に方、という枠組みを外して作品そのもののクオリティーに重きを置いて小説選びをする方が楽しい。坂口安吾は太宰と同時期に活躍した作家だが、特に衝撃的な死に方をしたわけでもない。故に太宰より少し人気が劣っているようだが、ぜひもっと多くの人に読んでいただきたい。短篇集である本書の中ではやはり「白痴」が素晴らしい。第2次大戦中の恐怖と混乱の瞬間。さまざまな経済的困窮や震災が襲ってくる今の日々の中で坂口安吾作品を読んだとき、必ず救われた気持ちになるはずだ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 上戸彩主演のテレビドラマ『昼顔』(フジテレビ系)の最終回が、関東地区で平均16.5%という高視聴率を記録したらしい。主婦の浮気を堂々と掲げたドラマが、特に女性の耳目を集め、にわかに不倫に憧れる人妻も増えてきそうだ。
 とはいえ既婚者の浮気は、夫の火遊びであれ、妻の不貞であれ、常にリスクが伴うもの。そこでいざバレて離婚…という事態に陥った際、どう対処すればいいかを冷静に解説した本が『パートナーの浮気に気づいたら! 調査・慰謝料・離婚への最強アドバイス』(中央経済社/1800円+税)である。
 浮気に走ると「携帯電話にロックをかけ」「急にオシャレに気を使い出す」などの行動パターンを示し始めるので要注意。次に夫または妻のそうした行動に疑問を感じたら、財布の中の「レシート調べ」や「携帯メールを写メで撮影する」など、証拠を集めることを勧めると説く。
 さらに、浮気調査を行ってくれる探偵事務所の上手な選び方から、いざ離婚するとなった際の慰謝料請求の方法まで、4人の弁護士が詳細に助言するといった内容だ。
 「統計上、夫婦の3組に1組が離婚している現在の日本」(前書きから抜粋)においては、決して対岸の火事とはいえない。ロマンチックな不倫ドラマに浮かれてばかりいないで、万一に備え、こうした離婚マニュアルも読んでおけということだろう。
 というより、この書籍を読むと、そもそも浮気をする気になどとてもなれないだろうが…。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ