JR飯田橋駅東口前。地下鉄A2出口すぐのJR線高架下に「いいだべえ 平成2年4月」と記名されている。交通量の多い目白通り沿いにあってその存在に気付く人は少ない。だれもいないのにダジャレを言っているような物悲しさが漂う。
その塀には、緑、ピンク、黄色、青など大小色とりどりのクジラが描かれている。50m以上の巨大クジラもいれば、小さいのは数cmほどで群れをなしている。どれも抽象的で目がなかったり、かたちもはっきりしない。クジラの愛称が「いいだべえ(飯田兵衛)」なのか、それともダジャレで「飯田塀」なのか?千代田区役所に聞いた。
「17年前の話ですよ。ちょうどバブルの頃で、区内も地上げがすごかった。地域崩壊を避けるため、地区ごとに『街づくり協議会』を立ち上げ、住民と行政が連携して街おこしを始めたんです。富士見地区ではあの塀が汚いからペイントしようとなって、名前をわざわざ全国から公募したんです」(当時の区担当者)
富士見街づくり協議会には武蔵野美術大学の講師がいた。生徒に書かせたデザイン案4〜5点からクジラの絵が選ばれたという。当時はまだ塀をデザインするのは珍しく、名前の公募には1000件以上の反響があった。4次審査を経て「いいだべえ」に決定したという。
「『べえ』は『塀』と『兵衛』の両方にかかるので、不真面目だとか、いやユニークでいいとか、喧喧諤諤の議論をしました。当日は除幕式をやったり、区役所から塀までパレードしたりとずいぶん賑やかでした。NHKのニュースにもなったんですよ」(同)
へぇ〜な話になっちゃった!