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話題の1冊 著者インタビュー 左古文男 『四万十食堂』 双葉社 880円(本体価格)

 −−本作は『深夜食堂』の作者・安倍夜郎さんとの共著作品ですが、出版の経緯を教えてください。

 左古 僕と安倍さんは高知県の中村(現・四万十市)の出身で、同世代なんです。それで、僕から郷里の食文化や地元メシを紹介する本を作りたいと相談を持ち掛けたんです。安倍さんは郷土愛が強く、年に2度帰省しているので、地元に明るい。僕はというと、上京して35年になるけど、数えるくらいしか帰郷したことがなく、すっかり郷里の事情に疎くなっているので、安倍さんに水先案内をしてもらう必要があったんです。

 −−必ずしもグルメ本というわけではありませんね。

 左古 料理の味が云々、というものではないですね。『深夜食堂』を読めばわかるように、安倍さんは庶民的な料理が嗜好に合うようです。僕も同じで、自分に限っていえば、繊細な味をかみ分けられるほど舌が肥えているわけではないし、食味形容の語彙にも乏しく、本来は食を語ってはいけない人間なんです(笑)。
 そんなわけで、端的に言えば、僕たちが生まれ育った故郷にはこんな食材や料理、地酒などがあるよという内容になっています。安倍さんが書き下ろした「わが四万十食堂」という短編と『深夜食堂』の再録も2本収録されています。郷里の味がテーマの対談も所載しているので、『深夜食堂』の副読本としても愉しめる1冊になっています。

 −−再録作品はどのような話ですか。

 左古 四万十川の青のりと、宿毛湾で獲れるキビナゴにまつわる話です。『深夜食堂』は「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で8年以上連載していますが、郷里の食材にまつわる話はこの2本だけ。その理由を聞いたら、お国自慢というものはシラけるし、故郷を愛すればこそ、大げさなことは書きたくないということでした。

 −−四万十には自慢できる料理がたくさんありますか。

 左古 あらためて取材してみると、いろいろな発見がありました。高知県西南部は海山川がそろっていて、食材には事欠かないんです。
 本書を読んで四万十川周辺に興味を持ち、実際に行ってみようと思われる方もいるかもしれません。それはそれで、著者としては本望ですが、あえて言っておきたいのは、思い付いたからといってすぐに行ける場所ではないし、飲食物の嗜好は個々人で違うということ。あの料理が食べたくて遠路はるばる行ったのに口に合わなかったという方がいるかもしれません。そこだけはくれぐれも理解していただきたいですね。
(聞き手:馬場竜二)

左古文男(さこ ふみお)
1960年、高知県生まれ。ルポルタージュ、エッセイ、小説、漫画など幅広い分野で執筆する傍ら、雑誌や書籍の企画・編集も行っている。

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