<<殺陣が出来る若手がいない>>
「時代劇はいわばチャンバラ活劇ですが、殺陣が出来る若者が今本当に少ないんです。また、テレビ制作を取り巻く環境も劇的に変化し昔のようなチャンバラ活劇を制作することが難しくなっていることも事実です。チャンバラはやはり、得物を持ってとっくみあう故、殴る蹴るといった普通のアクションに比べて圧倒的に危険性が高い。しかし、主演はおろか、切られ役にさえも演者に危険な撮影を要求しにくくなりつつある、今日の風潮はアクションエンターテイメントとしての時代劇を衰退させる大きな要因となっています」(時代劇殺陣師)
<<所作がおろそかになっている>>
「時代劇の動き、すなわち所作は普通のドラマとは全く異なります。身分や位によって、障子の開け閉め一つにしても全く所作が異なるものであり、一日そこらで身に付くものではありません。着付けから始まり、所作事の基本を常日頃、鍛錬して習得していかなければならないものです。時代劇は何度も斜陽の時代を迎えましたが、“映画が廃れてもテレビの連続活劇がヒットし”といった形で時代劇の歴史も一昔前まではベテランから中堅、若手へとバトンが渡されていったのです。日本舞踊や殺陣も師から弟子へと受け継がれ、その芸は時代劇作品へと還元されてきました。ところが今日になってテレビが、ゲームやインターネット、携帯電話といった新しいものに圧され、テレビに代わって時代劇を育てる土壌がないままに現在まで至ってしまったわけです」(日本舞踊家)
<<懸念される悪循環のスパイラル>>
「殺陣師や俳優だけではなくて、実はメイクスタッフや美術スタッフも育てる土壌がなくなりつつあります。しかも間の悪いことに、ハイビジョンが普及しつつある現代においては時代劇の造りの粗さというのはより露骨に画面に表れてしまうんです。時代劇はやはり、一般のドラマとはジャンルが大きく異なるものであり、しかも高い予算と技術を要求されます。しかし、今日こうして時代劇そのものの制作本数がここまで激減すると否が応でも、次の時代を担う若手を育てる環境そのものすら存在しないといっていい状態なのです。時代劇は文化。国か文化庁などが危機感を持って、この文化を存続させていこうという動きを見せてくれなければ、将来的には冗談抜きに時代劇というジャンルは再放送でしか見れない作品となってしまうかも知れませんよ」(元・時代劇監督)
斜陽を迎えた時代劇の創り方もまた、有名タレントの起用などによって迷走しているのもの事実であるが、時代劇の造り方が刷新され、殺陣等の時代劇本来のスキルを持ち合わせた新しい若手スターが活躍できる風潮と制作環境さえ成しえる事が出来るなら、まだ時代劇再生への道はあるという。やはり、時代劇こそ日本のドラマ、どうか今一度活力を取り戻し、世の中に痛快チャンバラアクションで活力を与えてほしいものである。