「ノリが近鉄、オリックス、中日など過去に在籍したチームの関係者やルートを辿って、各方面に現役続行の相談をしていたのは知っています。いつの話かって? 楽天を解雇された直後、それから、オープン戦が始まったころにも聞かされました」(在京球団職員)
確かに、外国人選手は「当たり、ハズレ」の差が激しい。それならば、通算1823安打、378本塁打、1202打点の中村ノリの方が確実に計算も立つ。
しかし、こんな情報も聞かれた。
「楽天時代のノリは山崎武司に遠慮していたのか、中堅、若手をまとめるとか、チームを牽引するような言動は見られませんでした。それが昨年オフの解雇に繋がった、と」(ベテラン記者)
中村ノリを迎える側の横浜ナインだが、チームリーダー・村田修一(30)は「まずは全力疾走してもらいましょう。有無を言わさず。村田とノリさんが変わればチームも変わる。実績のある方ですし、アドバイスをいただきたい」と、各メディアにコメントしている。
「尾花(夫)監督は獲得に積極的ではありませんでした。それでも、フロントが獲りたい、あるいは獲るべきだと推すので、監督は『入団テストをやって』とも返しました。最終的にはフロントに押し切られる形で、獲得が決まりました」(プロ野球関係者)
中村ノリは三塁が“本職”だが、村田と重なる。そうなると、中日、楽天時代に守った一塁での出場が考えられる。しかし、一塁にはハーパー、一輝がいる。関係者やファンは「一塁・筒香」を願っており、そう考えると、中村は「当面は一塁か代打」、筒香が一軍に定着したら、「代打要員」か…。
「村田がノリに全力疾走させるって? 昨季終盤に痛めた『右大腿二頭筋部分断裂』が完治しているかどうか、古傷を理由に走らないなんてワガママを許さないための“牽制”でしょう」(前出・在京球団職員)
契約は1年、年俸500万円プラス出来高。こんな低い条件でも契約したくらいだから、心底から野球に飢えていたのだろう。バットでその気持ちを表してほしい。
「横浜の親会社であるTBSホールディングスは売却の可能性を決算報告でも完全否定していません(5月12日)。ノリはビッグネームですし、今回の獲得によって、球団の価値が上がったと見るべきでしょう」(前出・同)
今回の補強の目的は、戦力以外のプラスアルファーもあったらしい。横浜がオフの主役になる可能性は否定できない…。
入団会見で、中村ノリの性格を垣間見ることができた。村田が「全力疾走させる」と苦言を呈したことについて聞かれると、「村田君はリーダーシップを発揮している。尊敬もしている」と語った。
たとえ相手が7歳も年下でも、こんなふうに敬意を表せるのは、さすがだ。
FA権を行使して、阪神、巨人、メッツと交渉した02年オフのことを思い出した。当時の中村ノリは行く先々で報道陣に待ち伏せされ、かなり苛立っていた。しかし実際に質問してみると、その風貌とは似つかない、震えた声でホソホソと返すだけだった。本当は、報道陣の多さに怯えていたのだ。「阪神、巨人のような注目度の高いチームに行って、やっていけるのだろうか」−−。そう懸念した取材陣は少なくなかった。
その後、中村ノリは故障なども重なり、子ドジャース、オリックス、中日、楽天を渡り歩いた。「特定の選手、旧近鉄の関係者とばかりつるんでいる」。そんな“悪評”も聞かれた。故障、調整のためとはいえ、実績のあるベテランが二軍落ちすれば、若手から話し掛けることはできない。二軍生活(調整)が長くなれば、一軍選手たちと打ち解ける時間も少なくなる。その悪循環が近年の不振の遠因だったのだろう。
02年のオドオドぶりもそうだが、中村ノリという男は人見知りもするシャイな性格なのである。活躍できるかどうかは、キャンプテン・村田や横浜ナインの接し方に掛かっている。(スポーツライター・飯山満)