彼らの描いた作品は日本でも多く読まれており、子ども達を夢の世界に誘ってくれる作品が多い。だが、実際は恐ろしい内容であったことは、最近人々に知れ渡りつつある通りだ。
例えば『白雪姫』だ。ある国に白雪姫という非常に美しい少女がいた。
彼女のことを疎ましく思っていた、継母である王妃は言葉を話す魔法の鏡を持っていた。白雪姫が7歳になった時、今まで「世界で一番美しいのは」と問うと「貴方です」と答えていた鏡が「白雪姫だ」と答えるようになったため、怒り狂った王妃は猟師に白雪姫を殺すように命じた。
しかし白雪姫を哀れに思った猟師は森へと連れ出して逃がした。
森の奥へと逃げた白雪姫は7人の小人たちと出会い、共に暮らすようになるのだが、後に王妃に生きていることがバレて幾度となく殺害されかける。最後に、王妃によって作られた毒リンゴを食べて白雪姫は死んでしまうのだが、7人の小人が弔おうとしている時に、一人の王子が彼らの元を訪れる。
王子はガラスの棺に入っていた白雪姫を一目見るなり気に入ってしまい、死体でもいいからと貰い受ける。白雪姫は城に運ばれている途中に、喉に詰まっていたりんごを吐き出して生き返った。生き返った白雪姫は王子と結婚して幸せになる、というのが現在日本に伝えられている『白雪姫』である。
ここまでならばハッピーエンドなのだが、原本では続きがある。
王子と白雪姫の結婚式には王妃も呼ばれることとなった。王子の城を訪れた王妃には真っ赤になるまで熱された靴がプレゼントとして用意されており、それを履かされた彼女は死ぬまで踊らされたという。
さらに継母と描かれている王妃は、原本では実母であったり、王子はネクロフィリア(死体愛好家)であったとされている。元々は非常に残酷であり、到底子供たちに良い影響が与えられると思えないような童話だったのだ。
グリム童話には以上のように残酷な設定の童話が多いのだが、グリム兄弟がお互いへの愛に溢れた者であったことはあまり知られていないだろう。兄弟で有名になったらそれを嫌がることもあるが、彼らはずっと二人一緒であることを望み続けた。彼らは人生の殆どを共に過ごし、離れてしまった時期には、お互いがどれだけお互いを思い続けているかを記した手紙を送り合っていたといわれている。
兄弟愛というには少し強すぎる気がするこの二人が描いた童話は、ハッピーエンドではなく残酷なものだった。グリム兄弟の生まれ育ったドイツはキリスト教であり、同性愛は禁忌とされている。
彼らの童話の裏には、世間に対する負の感情が含まれていたのかもしれない。
(梅季 立風 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou