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本好きオヤジの幸せ本棚(81)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『こちら警視庁美術犯罪捜査班』(門井慶喜/光文社 1575円)

 そもそもの設定自体の面白味で読者を引き込む技に長けている、という作家がいる。門井慶喜もしかりである。2009年に出した『パラドックス実践 雄弁学園の教師たち』はタイトルからわかる通り、議論などの雄弁術を重要な科目として置く名門校が舞台の連作短篇集で、弁舌の立つ生徒から難問を吹っかけられて四苦八苦する先生たちの姿が笑えて、切なかった。
 さて本書『こちら警視庁美術犯罪捜査班』も、やはりストレートなタイトルを持つ連作短篇集だ。主人公は警視庁捜査第二課の下部組織に所属している20代の新米刑事・三田村豪気と、少し年上の上司・岸すみれである。他に同僚はいないので、もっぱら2人だけで美術犯罪の捜査を手掛けている。
 作中、殺人事件は起きない。レンブラントの銅版画の複製、ロダンのブロンズ像の複製等が度を越した高値で売られる、といった案件が話の中心だ。売る側は最初から複製と言っているので、贋作を真作と偽る詐欺には当たらないが、その違法スレスレの悪だくみを暴こうとする2人の奮闘ぶりが実にいい。
 作者はさまざまな工夫を凝らしている。美術に関する知識が盛りだくさんなのはもちろんだが、豪気の愛嬌あるキャラクター、悪だくみ専門の美術商との対決シーンなど読みどころはいくつもある。とてもチャーミングな小説だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(河治良幸/ソル・メディア1470円)

 ふがいないチームに対し、「何やってんだ!」と罵倒したくなるのがサッカー。本書が提示するさまざまなデータを目の当たりにすると、印象論を振りかざして怒鳴り散らしていた自分が恥ずかしくなります。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 壇蜜のセクシーな顔写真が表紙を飾っているのにひかれ、手にしたのが『おとなの流儀』(KKベストセラーズ/690円)。
 巻頭カラーは「世界の絶景」と題され、アメリカの塩の湖・モノ湖やフィンランドのオーロラなど、この世のモノとは思えない景観を美しい写真で展開。そうかと思えば、女性モデルの入浴姿が楽しめる「秋の紅葉露天風呂」といった艶っぽいページも。丁寧な作りのA4変型版グラビア雑誌として、オトナの鑑賞に耐えうる誌面となっている。
 また特集は「人妻vs愛人のすべて」。人妻AVに出演する奥さんの素顔や現代の愛人ビジネスの実像から、処女膜再生、小陰唇縮小など熟女がハマる女性器美容の最前線まで、38ページにわたった“オンナ”の企画を堪能できる。
 余暇・趣味・女と、男心をソソる3大テーマが詰め込まれた、今では珍しいダンディズムを感じさせる雑誌だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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