1972年(昭和47年)から1983年(昭和58年)の約10年間に東海および近畿地方で男女含め8人を相次いで殺害した「勝田清孝」という連続殺人鬼がいた。
勝田は1972年に京都府に住む24歳のホステス女性を殺害したことを皮切りに、33歳のクラブママ、32歳のホステス女性など合わせて8件の殺人を起こした。勝田は計画性をもって殺人を起こすタイプの人間ではなく、その時の感情を優先し衝動的に殺人を起こすタイプの人間(殺された被害者に共通点は見当たらない)で、行動原理が人間というよりも動物に近かったため、犯人の特定には相当な時間がかかったとされる。
そんな勝田がテレビのクイズ番組に出演したのは1977年7月のことであった。
出演したのは朝日放送(ABCテレビ)で放送されたクイズ番組『夫婦でドンピシャ!』という落語家の月亭可朝と女性漫才師の海原小浜が司会を務める番組で、一般参加の夫婦(4組)がお互いの私生活に関する質問に答え、それが夫婦同じ答えなら賞金を獲得できるというもので、勝田は当時結婚していた妻と出場。仲の良い夫婦ぶりを見せ、時々のろけ話も出るなどし、最終的に勝田夫婦は優秀な成績を収め、優勝してしまったという。
恐ろしいのは、番組に出演した勝田の前後の行動である。
当時の記事によると、番組が収録された7月6日の6日前、勝田は名古屋市の麻雀店に勤めるアルバイト女性を絞殺。さらに優勝から1か月も経っていない8月12日には美容師指導員の33歳女性を殺害している。
この事実は勝田が逮捕された1983年に判明したのだが、このあまりに大胆不敵な行動に当時の新聞読者は恐怖したという。
なお、『夫婦でドンピシャ!』はこの時点で放送が終了しているが、司会を担当していた海原小浜は優勝した勝田のことをよく覚えているといい、「とても人を殺すような人間には見えなかった」と語っている。なお、勝田は2000年(平成12年)11月30日に死刑執行されたが、この勝田の死刑執行は20世紀最後に行われたものだった。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)