『粘膜戦士』 飴村 行/角川ホラー文庫 620円
誰も他人の空想の自由を奪う権利は持っていない。空想にふけり過ぎて、仕事をサボりがちになれば周りが迷惑するかもしれないけれど、そうでなければ余暇のひとときに頭の中であれやこれや思い巡らすのは本当に個々人の自由だ。そして往々にして私たちは、実際にやったらきっと恥ずかしいだろう行為、とんでもなく残虐で救いのない場面を夢見がちである。
本書の作者は1969年生まれで、現在エンターテインメント小説の分野でかなり注目されている書き手だ。2008年に『粘膜人間』で日本ホラー小説大賞長編賞を得てデビュー。わずか2年後に『粘膜蜥蜴』で日本推理作家協会賞を獲得したのだった。タイトルからわかる通りこの作者は〈粘膜〉シリーズなるものを書き続けている。グロテスクでエロティック、恐怖と官能の世界で読者の脳髄を刺激する。しかも笑いの要素も加味されている。気持ち悪いはずなのに病み付きになってしまう不思議な魅力をどの作品も持っているのだ。
本書はシリーズ初の短編集だ。収められている5つの物語すべてが第二次大戦下を時代背景にしている。凶暴な将校から部下が理不尽な命令を受け続ける「鉄血」、半端ではない拷問が変態妄想と結び付く「極光」…こんな世界を楽しめるとは、やはり自分は日頃からおかしな空想をしているなと気付いてしまう戦慄の作品集だ。
(中辻理夫/文芸評論家)
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
3月30日にセ・パ両リーグ同時開幕となったプロ野球。思えば昨年の今頃は、震災によりパ・リーグは早々に開幕延期を決定。対して節電中にもかかわらず、一足早く煌々と照明をともしてドームでの試合を主張したのが、かの読売巨人軍。そして今年は、例の裏金問題だ。
その巨人のオフィシャル雑誌ともいえるのが『月刊ジャイアンツ』(報知新聞社/500円)。創刊37年目。球団オフィシャル誌は阪神や中日、ソフトバンクにもあるが、歴史は最も古い。
内容は注目選手の対談やインタビュー、今季に懸ける意気込みなど。新人・若手など巨人の生え抜き選手を主に取り上げ、FA組に(少なくとも最新号では)触れていないところに、逆に巨人らしからぬ違和感を覚える。
巻中に挟まれたピンナップ・ポスターは、裏金問題の渦中にいる高橋由伸。表紙に印刷された『開幕2012躍動せよ!G戦士』というキャッチが、今年に限ってはイヤに白々しく聞こえてしまう。(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意
◎気になる新刊
『優香グラビア』(講談社・2940円、等身大ポスター付き特装版3675円)
優香が三十路の美熟女だということを堪能できる写真集。同時発売の「優香ボディー」(1500円)は優香式ダイエットの公式本で、こちらはプロポーションの変化を拝むことが可能。特装版のポスターは、何と水着がほどけるそうだ!