東京都足立区に居住するA氏は、緊急連絡先として伝えた実家に、電話や内容証明郵便で退去を要求されたとする。実家への電話で不気味な点は最初に「A氏と事務所で知り合った」と自称する男性から電話がかかってきたことである。
男性は「このままでは事件が起きますよ」と警告した。この男性との電話が切れた直後に、建物所有者から電話がかかり、「建物を不法占拠されて困っている」と説明があった。立て続けの電話に応対したA氏の母親は「気持ちが動揺して震えがきた」と、その時の心情を記している。男性の電話の直後に建物所有者が電話した経緯から、A氏は追い出し屋が建物所有者を動かしていると分析した。
また、内容証明郵便では「現在弁護士を立てて刑事事件告訴、民事裁判への準備中」とした上で、不気味な電話の主はA氏の両親に対しても以下のように述べた。
「ご両親様は、ご子息の犯罪の数々を見て見ぬふりをし、資金提供をなさっておりますので、両名を犯罪の加担犯として刑事事件該当の犯罪者とみなし、刑事告訴する用意がございます」
A氏は、「加担犯」という刑法には存在しない講学上の用語が使われていることから、弁護士が書いたものではなく、難しそうな言葉を並べた脅しであると推測した。本人には脅しが通用しないために、両親を脅して追い出しを狙う卑劣さに憤った。
これに対し建物所有者側は、A氏が最初から不法占拠しており、賃貸借契約も存在せず、賃貸借トラブルとは次元の異なる問題であると主張する。巨漢のA氏に対し、建物所有者は女性であり、身の危険も感じている。それ故に男性に相談したという。
(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)