既にその守備能力の高さは米球界にも知られており、日本代表での国際試合でもフィールディングのポテンシャルの高さを披露している。一方で打撃に関して、数字の上では際立った成績を残してきたわけではない。ただ、一昨年のWBC準決勝アメリカ戦では、日本打線がアメリカ投手陣の球筋を捕らえられずにいる中、この試合唯一の得点となる本塁打を右方向へ放つなど、一発を狙える思い切りの良さも持ち味としている。来年には30歳となる菊池が攻守において、米球界でどんなプレーを見せてくれるのか、野球ファンの関心は高まり続ける一方だ。
その理由の一つとして、過去、内野手のメジャー挑戦が苦闘の連続であったことが挙げられる。特に、守備面での適応の難しさが見られた。
アメリカで7シーズンを戦った松井稼頭央はメジャー初年度の2004年、守備時に相手の激しいスライディングを受けて負傷している。さらに天然芝のグラウンドにも苦しむなど、遊撃の盟主として鳴らした日本での動きを発揮できず、米国内では守備に厳しい評価を下す声も少なくなかった。
また2011年、千葉ロッテからミネソタ・ツインズへ移籍した西岡剛はシーズン開幕スタメンを飾るも、それから間もなく試合中のアクシデントに見舞われた。併殺崩れを狙った相手走者のスライディングで左足を骨折している。日本とのプレーの差、そしてメジャー野球の厳しさを痛烈なまでに浴びせられている。
守備面において打球の質、グラウンド、走者への対応など、多くの局面で日本との違いを受け入れ、適応できるかが重要であることは確かだ。特に菊池はその守備能力を自身の最大の武器としていることは明らか。米球界全体から注目が寄せられる中、守備で信頼を勝ち取ることは簡単ではない。
だが、昨シーズン終了時よりメジャー挑戦の意思を公にしてきたことは、アメリカでのプレーへの自信と覚悟の表れだったと言えるかもしれない。メジャーの舞台でも、これまで記憶に刻まれてきた菊池の「美技」、そして意外性を秘めた打撃など、予想もつかない動きで我々を楽しませてくれる日が訪れるはずだ。