渡辺氏がこの日を“決行日”に選んだのは、同日中に2008年度第2次補正予算案が衆院本会議で採決されるため。党籍を持ったまま「反対」もしくは「棄権」票を投じることになれば、党内外から非難が集中することも予想される。後ろ指をさされることなく正々堂々と「麻生NO」の旗を揚げたかったわけだ。
こうした行動への理解を得るため、渡辺氏は12日、地元の栃木県大田原市で会合を開き、後援者に仁義をきった。離党の正式表明だった。記者団には「天下り規制の緩和は撤回すべきだと(首相に)提言したが、黙殺、否定された」と悔しそうな表情をみせ、首相の姿勢を「政権維持最優先の政治はやめるべきだ」と批判した。
いずれこうなるであろうことは、渡辺氏が首相に衆院の早期解散や定額給付金撤回、公務員制度改革断行などを求めたころから明白だった。漢字は読めなくてもプライドだけは一丁前の首相が、たかが元閣僚にすぎない一議員の忠告などまともに受け止めるはずがないからだ。
それどころか、首相はバカのひとつ覚えのように「政局より政策」と繰り返して早期解散を否定。各種世論調査で国民の多くが批判的な定額給付金にもこだわり続けている。そうした状況下での渡辺氏の反旗には、内心で怒りの炎を燃えたぎらせているに違いない。
その証拠に、首相は訪韓を終えて帰国した12日午後、生出演したフジテレビ系報道番組「スーパーニュース」で、渡辺氏が地元で“離党宣言”したニュースにも無反応を決め込んだ。これまでと同様に「離党する、しないは個人の問題」と取り合わず、その影響も「ない」と言いきった。渡辺氏に続く離党者は出ないという。
しかし、党内には少なからず渡辺氏のアクションに共鳴している議員がおり、“クーデター”成功の見通しが立てば、ぞろぞろと動くことも十分予想される。
なんといっても、麻生内閣の支持率はいまだ真っ逆さまに急落中。解散総選挙で自民党公認をもらえても、国民にソッポを向かれては当選はおぼつかない。渡辺氏は「わたしがまず外に出て国民運動を起こしたい」と同志の参集に期待を込めている。