不安要素も伝えられていた。CBSスポーツなどいくつかの野球サイトでは、打撃面での不安を挙げていた。また過去においては、メジャーリーグに内野手として挑戦した日本人のほとんどが失敗に終わっている。米国人ライターが今オフの米FA市場について、こう説明する。
「主力級の二塁手が何人もいます。スターリン・カストロ、ブライアン・ドージャー、ジェイソン・キプニス、ジョナサン・スコープ、最大の目玉は、今季のナショナル・リーグ優勝決定シリーズでMVPを獲得したハウィー・ケンドリックです。ケンドリックは36歳なので評価は分かれますが、どの選手もメジャー通算で100本以上の本塁打を放っています。『守備職人』の菊池はメジャーでの実績がありません。打撃面での不安も伝えられているので、彼らとの交渉に失敗したチーム、あるいは、低予算で補強を終えたいとするチームとの交渉に限られてしまうでしょう」
菊池も実力派二塁手がそろう米FA市場のことは分かっていたはずだ。それでも、広島球団を説得したということは、本気でメジャーリーグに挑戦してみたいと思っているのだろう。
「プレミア12の一次ラウンド中の菊池の打撃フォームを見て、『これは本気だ』と思った侍ジャパンのメンバーもいました。菊池は左足をやや高く上げてスイングするスタイルでしたが、プレミア12では左足を大きく動かしていません。メジャー投手のスピードボールに対応するための前準備ですよ」(球界関係者)
その左足の動かし方の変化は、菊池の視察を続けてきた複数のメジャースカウトも指摘していた。左足の動かし方を変え、プレミア12で改めて米球団にアピールしていたのだろう。
「あえて弱点を付け加えるとしたら、菊池はメジャーの中に入れば、強肩ではありません。態勢を崩しても一塁に正確なスローイングができる点はすばらしいですが、捕球後、態勢を立て直して、左足を踏み出して速いボールを投げてくれたら…」(前出・米国人ライター)
攻守ともに、左足の使い方が移籍後の課題となりそうだ。
そもそも、菊池は“キクマル・コンビ”と呼ばれた丸佳浩がFAで巨人に移籍した後、「広島での仕事を終えた」という思いも抱いていた。アニキ的な存在だった新井貴浩氏も引退し、打撃面で指導を仰いでいた石井琢朗コーチも退団してしまった。チームに対する愛着も強かったが、疎外感も抱いていたのかもしれない。今でこそだが、菊池は18−19年オフ、メディア出演するたびに米球界挑戦の質問を受けたが、一度も否定しなかった。自主トレ中も「米球界挑戦の意思」を口にしていた。これからキャンプが始まるという時期に“退団の意向”を口にすれば、チームに悪い影響も与えかねないのに、だ。
見方を変えれば、菊池は米球界挑戦の準備をしっかり進めていたことになる。今オフ、実力派二塁手が米FA市場にそろうことも想定の範囲内だったのでは? すでに敏腕代理人とも契約を交わしているとみるべきだろう。(スポーツライター・飯山満)