原因の一つは、得点効率の低さだ。稲葉篤紀・代表監督(47)の期待していた坂本勇人(30)が極度の打撃不振に陥っている。
「シーズンの蓄積疲労でバットスイングはもちろん、全体の動きにキレがありません」(スポーツ紙記者)
坂本の一次リーグでの打撃成績は11打数3安打(2割7分3厘)。カナダとの壮行試合から数えると、13打席目で「やっとヒットが出た」状態だ。打順は1番から6番に下がったものの、稲葉監督は「スタメンから外す? 考えていません」と言い切った(11月6日)。
「西武の源田など、ショートを守れる選手は他にもいます。稲葉監督は坂本にこだわり、これに異を唱える選手もいません」(現地入りした関係者)
稲葉監督が坂本にこだわる理由だが、まず一つは、彼の持つキャプテンシーだ。リーダーシップの取れる選手が元気なところを見せてくれれば、自ずとチームもノッていく。だが、今は打撃不振のため、チームも盛り上がっていない。一次リーグを全勝通過しても、侍ジャパンが「強い」と思われない理由は、このへんにある。
「初戦のベネズエラ戦で、稲葉監督は坂本に代打を送りました。代打を務めた山田哲人(27=ヤクルト)は、相当なプレッシャーを感じていました。結果は四球。試合後、山田は『緊張した』とこぼしていました。坂本の代打だから、緊張したんですよ。他選手の代打だったら、そんなに緊張しなかったはず」(前出・同)
逆転勝利できたから良かったが、ここで敗れていたら、稲葉監督は「壮行試合から不振と分かっていた坂本をなぜ使ったのか?」「代打を送らず、最後まで選手を信じるべき」との非難も免れなかっただろう。
「過去の国際試合でチームのまとめ役だったのが、稲葉監督でした。稲葉監督は坂本に自分を重ねて見ているのかもしれません」(プロ野球解説者)
NPBスタッフが新たな代表指揮官を選出する際、稲葉監督を評価した点は、チームのまとめ役もできる性格だった。この考え方は今も変わっていないという。少し気の早い話になるが、近い将来、坂本は侍ジャパンの指揮官候補に浮上してくるかもしれない。
NPBの内情に詳しいプロ野球関係者がこう言う。
「前回、小久保監督の後任を決める際、NPB内には役職上、決定権を持った人がいませんでした。そのため、合議制となり、さらに準備不足も重なって、稲葉監督と十分な打ち合わせもできないまま、発表会見となってしまいました。その反省から、『東京五輪が終わるころには、何人かの候補者を挙げておきたい』と…」
そう言われてみると、たしかに12球団の監督の去就問題を気にする関係者も増えてきた。現在、ユニフォームを着ている人の中にNPBの本命がいるのか? また、「稲葉−坂本コンビ」を高評価する関係者も少なくない。坂本が打撃不振を脱出し、プレミア12大会の優勝に導くような活躍を見せたら、稲葉監督の続投も十分に考えられるのだが…。
(スポーツライター・飯山満)