現役を引退したプロ野球選手を対象に、得票数上位30名が紹介されたこの番組。球史を彩ったスター選手たちが次々に登場したが、この30名の内25名はセ・リーグ一筋でプレーした選手やパ・リーグから移籍してきた選手。また、25名の内13名は、巨人のユニフォームに袖を通した選手で占められている。
1位は通算868本塁打、世界のホームラン王である王貞治(巨人)。残りのトップ5は、2位長嶋茂雄(巨人)、3位松井秀喜(巨人→ヤンキースなど)、4位沢村栄治(巨人)、5位野茂英雄(近鉄→ドジャースなど)と続いた。
一方、パ・リーグ一筋で現役を全うした選手は野村克也(南海→ロッテ→西武)、稲尾和久(西鉄)、福本豊(阪急)、村田兆治(ロッテ)のわずか4名だけ。日本時代はパ・リーグのみの所属である野茂英雄(近鉄)を含めても、セ・リーグはおろか、巨人の人数にも遠く及ばない。
「セ高パ低」、そして「巨人一強」の傾向が、かなり色濃く出ていた今回の投票結果。それが冒頭で述べた印象に繋がったわけだが、これと同時に筆者は「歴史は反映されるんだなあ」と妙な感心も抱いた。
地上波で試合が全国放送されていた巨人を中心に、セ・リーグについての報道は手厚かった一昔前のプロ野球。「人気のセ、実力のパ」という言葉もあるように、当時のパ・リーグは人気・報道面においてセ・リーグにかなり大きな差をつけられていた。
今回票を投じた1万人について詳細な説明はされていないが、番組内で投票理由を説明するファンを見るに、恐らくそのほとんどは先述の時代にプロ野球を見始めたオールドファン。そんな彼らに「あなたが選ぶレジェンド選手は?」と聞けば、セ・リーグびいき、巨人びいきの回答が返って来るのはむしろ自然なことともいえる。
その人選に疑問を呈する人も、ネット上には少なからず見受けられる今回の投票結果。ただ、球界が歩んできた歴史を考えると、セ・リーグの“大勝”は至極まっとうな結果であるのかもしれない。
文 / 柴田雅人