そんな中で、ワタクシが“釣るも食べるも楽しみ”な存在なのがマコガレイ。
一般的には産卵絡みで浅場へと寄る冬場が釣りにおける好期であり、食味のよい「子持ちガレイ」は食卓でも大人気。ゆえに“冬”を連想する方が多いことでしょう。
ところがどっこい、初夏を迎える頃には産卵からもすっかり回復しており、厚みが増した魚体は刺身が絶品! 水温の上昇とともに沖の深みへ移動してしまうため、関東以南では陸から釣りにくくなりますが、東北地方なら真夏を除いて狙うことができるので、カレイファンは勇んで東北を目指すんですね。
というわけで、美味なる旬魚・マコガレイを狙って、宮城県女川沖に浮かぶ江島へ。女川港と島とを結ぶ高速船(1日3便)に乗り込んでいざ出港!
好天&ベタ凪の海上から眺める牡鹿半島は新緑が萌え、素晴らしい景観が楽しめます。その山裾にはいかにも魚が着いていそうな漁港や岩場が目白押しですが、今回の釣り場はさらに沖合の離島。期待が高まって仕方ありません♪
やがて切り立った小島が見えてきたあたりで「ピーッピーッ!」と船の到着を知らせる汽笛が鳴り、鬼ヶ島を想起させる急峻さの江島へと入港しました。
島の人口は50人ほど。島内には商店はおろか自販機すらありません。そんな穴場ですから、船着場で竿を出してもいいのですが、今回は船着場から山を隔てて裏手に延びた堤防を目指すことにしました。だが、この当初の意気込みが大変なコトになるとは…。
この島には平坦な場所がほとんどなく、昭和の中頃までは島の女性が荷物を頭に乗せて運ぶ「頭上運搬」の文化が残っていたそうです。連続する急坂と石段に20キロ近い荷物を担いで挑む四十路のオッサン…。普段から運動不足気味の身体にはことのほかキツく、「オレ、このまま行き倒れになるんじゃ…」という不安にかられるほど。石段を登りきった頃にはもうヘトヘトです。
★美しい海から美しい鰈(カレイ)が!
島の頂上まで登りきったら、今度は下り。帰路が不安になるほどの急坂をしばらく進むと、目当ての堤防が見えてきました。離島らしく海水は青く澄んで抜群の環境。まさに穴場度満点な雰囲気です。
さっそく堤防先端から仕掛けを投入。竿掛け用の三脚に竿を置いて、魚が掛かるのを待ちます。人の気配が皆無の堤防から臨む切り立った岩礁、足下には濃く透き通った海。こりゃあ、最高の環境じゃねぇか!
素晴らしい景観を楽しんでいると、沖の砂地を攻めていた竿に「クンッ、ククンッ」と明確な魚信が出ました。すかさず竿を煽ると確かな重量感が続き、巻き上げると掛かっていたのは30センチほどのマコガレイです。
これに気をよくし、エサをたっぷり付けて同じポイントに再投入。しばらく待っていると再び「ククンッ!」と竿先が揺れます。
「さすが穴場。魚が濃い!」
そうウキウキしながら竿を煽ると、先ほどよりもしっかりした重量感が伝わりました。力強い突っ込みを楽しみながら巻き寄せてくると、足下に広がる澄んだ海の深くから茶色い背中が浮き上がります。念のために玉網を使って大事に取り込んだのは、40センチ弱のマコガレイでした。サイズアップです。
ちなみにカレイは、海底の状態に体色を合わせて擬態するのですが、さすがは外洋に住むマコガレイ! その美しい体色は都市部の港湾で釣れる個体とは比べ物になりません。こんな美しいカレイがポンポンと釣れるんですから、汗だくで山越えした甲斐があるってものですな。
上玉ゆえナマでもうタマラン
さて、持ち帰ったマコガレイは…そりゃあ刺身でいただきますよ。5枚おろしにしてから薄く切り分けていきますが、身にはうっすらとした脂乗りが確認できます。脂が滲みつつも半透明に透き通った美しい白身を一口。カレイ特有の濃い旨味に脂の上品な甘さが感じられて、チョー旨いっス!
やはり、旬を迎えたベストコンディションの魚は、旨いもんですねぇ。
そんな旨い刺身に合わせる酒は、宮城の銘酒『浦霞』。本醸造本仕込みのまろやかながらキレのよい飲み口と、マコガレイの甘さの組み合わせが実に心地よく、箸が止まりません。ただ、江島のアップダウンで相当疲れていたようで、気がつくとソファの上で朝を迎えるハメに…。
ちなみにこの釣行から3日が経ちましたが、まだ足腰が痛いです…。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。