14世紀イタリア。裕福な家庭でキアラという中年女性が、夫と二人幸せに暮らしていた。しかし、それは表向きの話で、キアラは夫に隠れて、美青年パンドルフォと浮気をしていた。ある日、体調を崩したキアラは病院で死期が迫っていることを告げられる。死について考えたキアラが、一番気がかりだったのはパンドルフォである。自分亡き後、すぐに他の女を作るに違いない。
それから暫くの後、いつものように情事に耽っていると、夫が部屋へとやってきた。咄嗟にパンドルフォは、隅に置かれた長さ2メートル程の衣類用木箱に隠れ、キアラがそれに鍵をかけた。間一髪部屋に入ってきた夫にキアラは、自分がもう長くはないことを告げ、大事な思い出の品を詰めた木箱とともに埋葬してくれるよう頼んだ。パンドルフォを閉じ込めた木箱である。このままでは生き埋め、声をあげ助けを求めても、その先は死刑である。木箱の中で、戦慄に耐えるしか術の無いパンドルフォとは裏腹に、他の女にパンドルフォを取られる懸念を解消したキアラは安心したのだろう、その夜が明けるのを待たずに死んだ。悲しみに暮れるばかりで、木箱に何の疑問も持たない夫とは違い、キアラの甥3人が埋葬前に木箱を開けに来た。ただし、それは愛人ではなく、財宝が隠されていると思い込んでの、言わば墓泥棒である。3人で木箱を無理にこじ開け蓋が開かれると、絶叫と共にパンドルフォが飛び出した。何も起こらなくても怖い夜の墓場である。3人は逃げ出し、パンドルフォは無事に脱出できた。その後、3人は墓泥棒がばれる為、この件を人に話すことも無く、パンドルフォはキアラの執念に人生を絶たれずにすんだ。
七海かりん(山口敏太郎事務所)
山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
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