フィリピン人の母・マルガリータさん(49)の祝福の投げキスに笑顔で応じた御嶽海はニコニコ顔。
「最高の気分。今朝、起きたら、(部屋の)みんなが優勝の準備をしていたので、もう優勝するしかないかな、と思った。前回の優勝はマグレだったけど、今回はしっかりと目標を持ってやった。11月(の九州場所)で(大関を)決めたい」
対照的だったのは、負けて大魚を逸した貴景勝だ。12日目に妙義龍を破って10勝目を挙げ、大関復帰を決めたときも、部屋関係者の顔には「喜び」より「戸惑い」の色が浮かんでいた。
「真っ先に感謝すべきは師匠なのに、貴景勝は『変わらず応援してくれる人に恩返ししたかった』と、かつての恩師、埼玉栄高の山田道紀監督に感謝の意を示したのです」(担当記者)
貴景勝と師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は、稽古場でもろくに口をきかないほど不仲。弟子たちも、千賀ノ浦親方子飼いの弟子と、去年の秋場所後に合流した旧貴乃花部屋系が2つに分裂したままだ。
「貴景勝はこの夏、部屋ではなく、母校の埼玉栄の相撲部に泊まり込み、山田監督のアドバイスを受けながら痛めた右ひざのリハビリに努めた。その感謝の気持ちを表したのでしょうが、そもそも部屋の師匠ではなく、母校の恩師を頼ること自体が異常です」(同)
しかも、優勝を懸けた大一番で左胸の筋肉を傷め、「イテーッ、筋肉が切れている。最悪だ」と支度部屋で顔をゆがめていた。
胸の筋肉のけがといえば、稀勢の里の引退の引き金になったほどで、致命傷になりかねない。一難去ってまた一難。果たして貴景勝は、度重なるけがを乗り越えて歴史に名を残せるか。けがの状態は、左大胸筋の肉離れで、治療におよそ6週間かかるという。なんとも不運というしかないが、来場所は大関復活だ。“強い貴景勝”が帰ってくることを期待する。