記録ラッシュを生んだ“魔法の水着”に注目しているのは競泳選手だけではなかった。体が一回り小さくなるほどの締め付け性能と、生地の薄さ、耐久性の弱さなどがAVメーカー関係者をぐいぐい引きつけている。
SODクリエイトで競泳水着AV制作に携わった企画担当者は「LRは生地が薄く、しかも破れやすいと聞く。AVでは小さめのサイズをパツパツに着るのは常識だし、ボディーラインがはっきりわかるのが競泳水着の魅力。体格がむっちりした娘に激しい動きをさせて、ポロンとかをやりたいですね。乳首も透けそうだし、入手できるのであれば100%使ってみたい」と興味ありありの様子。競泳水着マニア歴10年と公私にわたる筋金入りで、唯一の難点はハイレグではなく露出少なめのフルボディースパッツ型であることという。
桃太郎映像出版の広報担当者はスラスラとシナリオを描いた。「競泳水着はフェチもの。締め付け性能による素肌との密着度を利用して、まずはパーツをアップにする。ローションをかけてヌレた質感を出し、フィニッシュは穴を開けて着たまま絡むとか」。具体的な企画はないが、検討する用意はあるという。
本紙が取材したメーカーの約8割が「LRに興味あり」の回答だった。背景には、水泳、陸上、武道などを題材にしたアスリート系AVの流行がある。「最近のトレンドは“筋肉系”で、北京五輪が近づいているため関連作品が続出している。LRが使えればこれ以上の話題はなく、1万本売れればヒットといわれる中、10万本のウルトラヒットも夢じゃない」(業界関係者)
もともと露出度の高い水泳競技をめぐっては、セクシー路線の競泳水着と定番ロリコン路線のスクール水着でマニアが真っ二つ。断然先行していたスクール水着市場を、競泳水着市場が激しく追い上げているとか。
今月始めに「現役水泳選手がAVデビュー!堀田友紀子」をリリースしたROCKET(ロケット)の広報担当者は、同作の順調なセールスを背景に「どうせLRを着せるならアスリート。女性特有の丸みを帯びた体形より、肩幅が広い水泳選手の肉体のほうが映える」と言い切る。鍛え抜かれた女性の肉体美と、なまめかしい姿態のギャップがウケるそうだ。
問題はLRが入手困難な状況にあること。LRの国内販売代理店ゴールドウインによると、1日に70着しか生産できないため、現在は選手への供給のみ。一般向け販売は12月以降になるという。女性用フルボディーで1着6万9300円と値が張るのもネックだ。
業界関係者の話を総合すると、1本の作品を仕上げるまで、企画、キャスティング、撮影、編集、パッケージ作成などでおおむね4カ月かかる。仮に12月にLRを入手できたとしても、来春リリースでは遅すぎる。取材に応じた各メーカー担当者は、あくまでも「LRがすんなり使用できるのであれば」との前提で回答しており、商標問題を含めクリアすべき課題は少なくない。興味はあっても…となる公算が高い。
それでも、どの業界より話題に敏感といわれるAV業界内では「どこが最初にLRを入手するか?」とのウワサがにぎやか。ごく少数派ながら、北島康介選手の「泳ぐのは僕だ」Tシャツばりに「演じるのは女優だ」と水着にこだわらない姿勢をみせる関係者もいた。
○LRの全貌
「LZR RACER(レーザー・レーサー)」は英スピード社が米航空宇宙局(NASA)の協力を得て開発した。6〜8日のジャパンオープンで北島康介ら五輪代表26人中、22人が着用し、16個の日本記録をマーク。国内3メーカーと契約する日本水連が着用の自由選択を認めた。
締め付けがキツいため、泳ぎ終えてすぐ片方のショルダーをはずす女子選手も。バスト5cm、ヒップ2cm、太もも2cmほどが縮まるほか、胸の大きな選手は均等に押し込まないともまれるような感触があるという。腕力のない女性は着るのに人の手が必要で、3人がかりで全裸から約30分かかるというから、ちょっとした“羞恥(しゅうち)責め”だ。
縫い目から水がしみ込まないよう超音波で3枚の生地を溶着しており、耐久性には優れない。海外では着用方法を誤って破れたケースも多いという。生地は0.3mmとストッキングほどの薄さで、触った感じは傘の素材に似ている。
記録ラッシュにわいたジャパンオープン以降、予約店舗には注文が殺到しているという。主流だったサメ肌水着が高機能&セクシーになった。
○AV監督・田村総一朗氏の話
海外に比べ、日本のAVソフトはジャンルが多岐にわたる。かなり細かい趣味・し好にもこたえるバリエーションを各メーカーがそろえるため、女優と話題性がヒットを決める側面はある。LRを使えるならスポ根ものでいく。着るのに時間がかかるらしいから、途中で破いたりするのもおもしろい。いまはプール付きのスタジオもあるので、更衣室で絡んでから水中で…という展開もいい。LRが破れてもその娘が優勝…とかね。