オリックス、DeNA両球団のファンに激震が走った。
特に寮時代から苦楽をともにした西勇輝や、エース金子千尋と名バッテリーを組んできた伊藤。人気が高かっただけに、トレードの報を聞いたファンのショックは大きく、SNSは荒れに荒れている。2012年には西とのバッテリーでノーヒットノーランを達成。シーズン終盤まで優勝争いを演じた2014年は、オリックスの正捕手としてベストナインに選出された。金子と最優秀バッテリーも受賞し、オフに開催された日米野球では侍ジャパンのメンバーに名を連ねるなど、球界を代表するキャッチャーへの道を歩んでいくものと思われた。
しかし、2015年シーズンにチームの調子が悪くなると、伊藤はスタメンから外れる機会が増えるようになった。2016年シーズンは後輩の若月健矢と競争を強いられ、昨シーズンは若月に開幕マスクと正捕手の座を奪われてしまう。昨年は打撃を生かすべく、三塁手、一塁手、指名打者として起用された。
それでも伊藤は「チームの役に立てるのなら」と全力プレーに徹していたが、昨オフの契約更改で「来年はキャッチャーに集中したい」とフロントに直訴。自主トレでは肉体強化に挑むなど、キャンプから攻守でアピールし、正捕手奪還に燃えていた。オープン戦では.391の高打率をマークし、2年ぶりに開幕マスクをかぶったが、シーズンが始まると7試合で13打席連続無安打。守備で精彩を欠いたのが決定打となり、4月18日に登録抹消。ファンからは再昇格を望む声が多かったが、新天地へ移籍することになった。
伊藤は 「突然のことで驚いています。ケガをして、歩くこともできなかった自分を救ってくれたオリックス球団、切磋琢磨してきたチームメイト、ここまで育ててくれた監督、コーチ、そして、どんな時も支えてくれたファン のみなさんには感謝のことばしかありません」とコメント。「“優勝”という恩返しができなかったことは心残りですが、新天地でも自分らしくがんばっていきたいと思います」と前向きだ。本来の力を発揮できれば貴重な“打てるキャッチャー”だ。「ボクはキャッチャーですから!」と言って臨んだ今シーズン、後半戦からでもDeNAの大きな戦力になってくれることを願いたい。
昨年のDeNAドラフト1位左腕、濱口遥大の“専属キャッチャー”を務めていた高城は、自主トレなどを通じてオリックスの若い選手と交流がある。今シーズンはベテランの山崎勝己にかかる負担が大きい。若月や伏見寅威にとっても、高城の加入は刺激になるはずだ。また、白崎はDeNAファンに愛され続けた未完の大器。オリックスファンにとっても「放っておけない」存在になる可能性は高く、園部聡と競わせたら面白いと思う。赤間はロングリリーフで試合を立て直してくれるタイプのピッチャー。DeNAの補強ポイントとしてはベストな人選と言えるだろう。
今回のトレードは、近年の起用を見ていると予想できなかったわけではないが、オリックス側から見れば後藤光尊氏が楽天にトレードされて以来の衝撃だった。誤審問題をはるかに超える爆弾が、前半戦の最後に爆発するとは誰も想像できなかったに違いない。
取材・文・写真 / どら増田