喋らない落合博満監督(57)が、このキャンプについて語った数少ない言動の1つに、「ポジションは4つないし、5つ空いている」なるものがある。
これまでのキャリアから察するに、捕手の谷繁、三塁の森野、左翼の和田は『当確』だろう。アライバコンビの荒木雅博(33=遊撃予定)、井端弘和(35=二塁予定)も、状況によってはスタメン落ちもあり得るということか…。この2人の二遊間コンビに、昨季ブレイクした堂上直倫(22/骨折により離脱)、岩崎達郎(26)、森越祐人(22)の新人コンビ、阪神からトレード加入した水田圭介(30)たちが挑戦するのだろう。
一塁手・ブランコを外野に追いやったのが、新外国人選手のフェリックス・カラスコ(24)である。一塁か、三塁での起用が予定されている。メジャー経験はないが、スイッチヒッターで、ライナー性の鋭い打球を連打していた。このカラスコが実戦でも鋭い打球を連発してくれるのなら、三塁でカラスコを使い、森野を一塁か外野へ、状況によっては前横浜・佐伯貴弘(40)を一塁で使うこともできる。ブキミなニューフェイスがもう1人いた。ジョエル・グスマン(26=外野手登録)だ。こちらは右の大砲タイプである。
このグスマンをスタンドから見ていると、シルエットは“柔道家”だ。体重113?(公称)だが、一塁や三塁も守れる器用さも見られ、決して俊足ではないが、「動ける巨漢」といった感じだった。
107?の中田亮二(23)、ブランコも102?、カラスコも104?…。12球団の平均体重もトップでは?
カラスコ、グスマンの加入によって、ブランコにもスタメン落ちの危機感が芽生えたようだ。昨季は4番を外されただけではなく、代打を送られる屈辱も味わった。不慣れな外野守備練習を受け入れたのはそのせいだろう。
堂上の骨折は痛いが、こうした野手陣の競争が良い方向に出ているのは間違いない。
一方の投手陣だが、ちょっと乱暴な言い方をすれば、現有戦力(昨季)から少しマイナスであり、そのリスクも覚悟しているような雰囲気だった。ドラフト1位の大野雄大(22)は昨秋のリーグ戦を故障離脱しており(大学時代)、当面は治療に専念する。テスト入団のエンジェルベルト・ソト(28=左投左打)は、コントロールは良かった。しかし、迫力に欠く。ドラフト3位・武藤祐太(21)は計算に入っていると思われるが、中堅・若手の頭角がなければ苦しい展開を強いられそうだ。3年目の伊藤準規(20)、一軍経験を積んだ高島祥平(20)、矢地健人(23)、背番号「11」を継承した岡田俊哉(19)の名前を挙げるプロ野球解説者もいたが、キャンプを見る限りでは確信は持てなかった。左のエース・チェン(25)のスロー調整は気掛かりである。
ネルソン(28)、山内壮馬(25)にもチャンスがありそうだ。大抜擢があるとすれば、昨季、稲葉光雄コーチからマンツーマン指導を受けていた小川龍也(19=2年目)だろう。
昨季も目立った補強をしなかったが、中盤以降の猛追撃で優勝を勝ち取っている。今季の中日は打撃戦に持ち込み、試合終盤を浅尾と岩瀬で逃げ切るつもりではないだろうか。案外、ブランコが代打登場するゲームも見られるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)