キャバクラ嬢の営業には、「友達営業」と「色恋営業」、「枕営業」がある。
この「友達営業」の場合、友達のように振る舞う営業であって、あくまでお客です。
そのため、友達扱いであって友達ではない。営業に関係なく、友達である可能性はないのだろうか。
歌舞伎町の店で知り合った東北出身のY嬢(28)がいます。もう既に結婚してしまい実家に帰っています。このY嬢を指名していたことがあります。ただ、もともとはその店ではS嬢を指名していました。
S嬢を2年間くらい指名していたのですが、突如、店を辞めてしまいました。どうやら結婚が理由とのこと。そのS嬢の一番弟子のような存在が、のちに指名することになるY嬢でした。S嬢なき後、Y嬢は私に近づいてきたのです。そのためか、会話の内容は最初はS嬢の話題でした。
このY嬢とは同伴はしたことはありますが、店外デートやアフターをしたことはありません。初めて店外で会ったのはY嬢が実家に帰ったときでした。私がたまたま東北方面に一人旅をしていたのです。電話をして会うことになりました。ここで会った後、Y嬢は店を辞めて実家に戻る決意をします。そんな話をずっとしていたような気がします。
こうしたプライベートな話はよくしていたので、これ自体が友達という感覚もありません。いったい、キャバ嬢にとって何が「友達」なのでしょうか。
R嬢(19)の場合、私と一緒に秋葉原のメイド喫茶やメイドリフレに行ったことがあります。R嬢が行きたいというので日程を合わせたのです。同伴出勤はなくプライベートな時間でした。
キャバ嬢と同伴なしで遊んだことがある人もいるでしょう。友人もよく遊んでいました。しかし、彼女達にとって友達なのかと言えば、違うような気がします。感じてしまうのは、「友達営業」の延長なんだなあ、ということです。もちろん、プライベートな時間を割くのですから、友達営業の対象となっている客の中では優先順位が高いのかもしれません。
キャバ嬢にとって、一人の客に対して営業抜きの友達という存在はあり得るのでしょうか。あり得るとして、その客はその後も店に行くのでしょうか。私の経験では、少なくとも、店で会ったのに店に行かずに、プライベートだけで会うことになったことは何度かあるだけ。なかなかプライベートな関係になるのは難しい。
ただ、意外なケースがある。地方のキャバクラに行ったときに知り合った嬢が、東京に遊びにくることがある。そのとき連絡があったりする。 そんなとき店外デートができたりするのだ。都内在住者は地方キャバクラに行ったとき、「どうせもう二度と来ない」と思わずに、つなぐ努力をしてみてはどうか。
また、都内のキャバクラであっても、電話やメールなどでいかにプライベートな関係になっていくのか、というのも楽しい遊び方のひとつです。客として扱われないのか、といったことに挑戦するのも面白いです。そのためには、キャバ嬢のわがままな電話にも付き合ったりすることも大切にはなります。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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