森田容疑者は近所では優しい子煩悩な父親として通っていた。ところが、事件発覚後は会社を休み、逮捕前の取材には動揺した様子がありあり。近所の目を気にして「名誉棄損」をチラつかせることもあった。
近所の人たちによると、休日に川で子どもとカニ採りをしたり、家族で買い物に行く姿がよく見掛けられていた。20代の主婦は「(事件のことは)信じられない」と話した。
十数キロ離れた勤務先まで車で通っていたが、現場の汚泥タンクは自宅から2、3キロ。捜査関係者によると、勤め先でもまじめな仕事ぶりだったという。
「こんな田舎で聞き回って、どうしてくれるんや」。事件発覚後の14日、森田容疑者は共同通信の取材に応じている。
車を米原市の自宅駐車場に止めた後の約15分間。取材されていることを知られたくないのか、近くの民家に目をやるなどしきりに辺りを気にする様子だったという。
小声で話していたが、記者が「犯人視していない。同僚の声を聞きたい」と告げると、関西弁で「ほんとやろな? 名誉棄損で訴えなくてはならなくなる」と語気を強めたという。
事件との関連性が疑われるのは、このとき森田容疑者が右手の指にけがをしていた事実だ。右手人さし指の先端に第一関節付近までばんそうこうを巻いているのを共同通信の記者が確認。米原署捜査本部は、小川さんともみ合った際にけがをしたか、タンクのふたで手をはさんだ可能性もあるとみている。
タンク周辺で血液反応が出ており、遺体には頭の陥没骨折のほか顔も殴られたようなあとがあった。
捜査本部はタンク周辺で小川さんに激しい暴行を加え、タンクに投げ込んだとみている。
森田容疑者は大手ガラスメーカーの社員で、小川さんは下請け会社の社員。ともに同県高月町にある工場に勤務し、2人は上司と部下の関係だった。
捜査本部によると、「殺害はしていない。殴ってもいない」と容疑を否認している。小川さんは10日午後8時ごろ退社、会社前で人を待つ姿が目撃されたが、その後行方不明になった。
小川さんの携帯電話の通信履歴などで、事件前に小川さんと会っていた疑いが浮上。日ごろから頻繁にメールのやりとりもしており、捜査本部は事件について事情を知っているとみて、19日朝から任意同行を求めて事情を聴くとともに、殺人容疑で自宅などを家宅捜索していた。