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2011年『12球団合同トライアウト』 野球を続けたい! 彼らの願いは叶うか 日本シリーズ(日程)編

 今年のトライアウトで、日程面でアドバンテージを受けていた投手もいた。前中日ドラゴンズ・河原純一投手(38)である。一般論として、『戦力外通告』を受けた選手はシーズン中盤以降、“もしかしたら”の予感を抱く。二軍にいる若手がとくにそうだが、極端に試合出場機会が減るからだ。実戦から遠ざかっていた彼らが“一発勝負”のトライアウトで結果を出すのは並大抵のことではないが、河原は違った。5日前の11月20日・日本シリーズ第7戦まで『実戦の場』にいた。それも最高峰の舞台で投げ、ゲームセットの瞬間まで肩を作っていたのである。

 トライアウト当日の成績だが、吉田真史(21=千葉ロッテ育成)、小林高也(28=中日育成)、松坂健太(26=北海道日本ハム)、石井義人(33=埼玉西武)の4人と対戦。先頭の吉田にはヒットを許したが、後続3人をしっかり抑えてみせた(セカンドライナー、ライトフライ、セカイドゴロ)。
 やはり、ボールのキレ、勢いが他投手とは違った…。研ぎ澄まされた『実戦感覚』は取材エリアにもひしひしと伝わってきた。

 −−今日の調子は?
 「(カウントが)1ボール1ストライクからなんで、難しいところもあったけど、まあよかったとおもいます」

 −−トライアウトには日本シリーズとは違う緊張感があるのでは? また実戦から遠ざかっていない分、ボールのキレ、勢いもあったように見えたが…。
 「雰囲気も違うし、でもそういう点では自分がいちばん実戦に近かったので」

 −−今日のピッチングを振り返って…。
 「少しボールが高かったかな。細かいことを言えばね」

 好不調に関係なく、淡々と語るのは若手時代から変わらない。第1期原政権でクローザーも務めた。当時は浮き上がってくるストレートの速さが最大の武器だったが、年齢とともにその威力を失った。しかし、落合中日ではむしろストレートの速度を使い分け、緩急でも勝負できるようになった。「まだやれる」というのが周囲の一致した声でもあったが、新生・高木中日は河原に対し、日本シリーズ前に『戦力外』を通告した。

 −−解雇を伝えられ、日本シリーズに登板するのは辛かったのでは?
 「いや、そんなの…。自分の仕事をするだけ。そのへんは関係ないし、気にしていない」
 河原は強く否定した。顔をしかめただけだが、ポーカーフェイスが乱れた。
 フロントへの憤りではなく、特別視されることを強く嫌ったのだろう。

 また、シリーズ覇者・福岡ソフトバンクホークスを解雇された藤田宗一(39)は「ビール掛けの翌日」に呼び出されたという。
 「(解雇は)全く予感していなかったです。いきなりだったんで、ドタドタしてしまったけど…。ビール掛け? 参加しました。次の日の午前中、いきなり電話で『来てくれ』って(球団に)言われて…。(トライアウト受験の)準備はしてきたし、万全ではなかったけど、自分はまだ投げられるってことをアピールできたと思う…。ボールのキレとか見てもらえれば…」
 藤田はクライマックスシリーズ、日本シリーズともに投げていない。公式戦19試合に投げ、0勝1敗だが、HP「5」。ソフトバンクの選手枠に割り込むのは並大抵ではない。ファームでは21試合に投げ、1点台の防御率を保っており、藤田の「まだ投げられることをアピールできたと思う」の言葉は、出場機会に飢えたベテランの叫びでもあったようだ。救援投手は「今日は投げる」という確証のない試合のなかでベストコンディションを持続していかなければならない。試合展開が急変すれば、いきなり「すぐ投げろ!」とマウンドに送り出されることもある。勝ち試合の9回1イニングしか投げない『クローザー』よりも、『セットアッパー』の方が精神的負担も大きい…。

 解雇通告を受けてシリーズ登板した河原、投手層の厚いチームのなかで実戦から遠ざかっていた藤田。精神面で強くなければ、セットアッパーは長年続けられない。両ベテランの“精神力”を必要とするチームは絶対にあるはずだ。(スポーツライター・美山和也)

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