大会が盛況だったのは、新日本の公式動画配信サイトの普及で、アメリカでも「NEW JAPAN PRO WESTRING」の大会をリアルタイムで視聴できるようになったのが大きいのだろう。配信サイトの活用は世界最大のプロレス団体WWEが先に取り入れた手法だ。中邑真輔やアスカ(華名)といった日本人選手の活躍により、日本でのWWE公式動画配信サイト会員数増加に大きく貢献している。
今回のロサンゼルス大会には、1.4東京ドーム大会でWWEのレジェンド、クリス・ジェリコを破り、アメリカ国内での価値を高めたケニー・オメガが登場し、復活させたばかりのゴールデン☆ラヴァーズを飯伏幸太と結成。日本のファンも世界のファンも羨むであろうヤングバックスとのタッグ世界最強決定戦をロサンゼルス大会のメインにした。SNSの反応をリアルタイムで見る限り、この試合を見るために朝からPCやタブレット、スマートフォンに釘付けになっていた日本のファンは多かったようだ。
大会はいつものように、テレビ朝日系列『ワールドプロレスリング』のオープニングテーマ曲『ザ・スコアー』(エマーソン・レイク&パウエル)からスタート。しかしこの曲は権利の関係で配信サイトでは流されていない。アメリカのファンにはなじみがなかっただろう。一方で日本のファンにとっては、あの曲がアメリカの会場で流れたことを想像しただけでも鳥肌モノ。実際、大会に同行した関係者も「スコアーが流れたときは感動しましたね」と感慨深げに話していた。
昨年はIWGP USヘビー級王座決定トーナメントの開催など、少しよそ行きなカードが並んでいた。しかし、今年はレイ・ミステリオJr.がゲスト参戦することが発表されたぐらいで、その他は日本でも毎月開いている新日本のビッグマッチをロサンゼルスに移行させたイメージだ。主要カードを日本のマット上で決めていたことがその象徴だろう。日本で生まれた遺恨をアメリカで決着させる、アメリカで生まれた遺恨を日本で決着させる。双方が上手く同居した大会だったと言える。
今回の大会で私がいちばん驚いた観客のリアクションは、鈴木みのるの入場シーンで「カゼニナレ!」の大合唱が起きた場面。おそらくWWEの日本公演をアメリカ人が見ると同じような感情を覚えるに違いない。日本で一番人気の内藤哲也に対する声援も、棚橋弘至へのリスペクト感もハンパなく感じられ、とてもうれしい気持ちになった。
ミステリオの欠場は残念だったが、会場で挨拶をする姿を見ると、今回流れてしまった獣神サンダーライガーとのレジェンド対決や、ウィル・オスプレイとの異空間対決へ夢が膨らむ。そしてメインではゴールデン☆ラヴァーズとヤングバックスが全力を出し合うベストバウトを展開。最後は紙一重の差でゴールデン☆ラヴァーズが勝利を収めたが、日本でもアメリカでも対戦を積み重ねて、我々が想像するよりも良い闘いを世界中のファンに見せてもらいたい。
大盛況だったアメリカ大会だが、次回大会は7月7日にカウパレス(カリフォルニア州サンフランシスコ)で開催されることが発表された。カウパレスは1950年代には“鉄人”ルー・テーズが頻繁に試合を行っていた。ビートルズもコンサートを開催するなどエンターテイメントの殿堂で、約1万5千人を収容できるアリーナクラスの大会場だ。次回は『G1クライマックス』直前の熱をアメリカに直輸入し、新日本プロレスをさらに世界へアピールする。
【どら増田のプロレス・格闘技aID vol.4】
写真提供・(C)新日本プロレス