2月1日、紅白戦
同月11日、キャンプ打ち上げ
3月8日、本拠地でオープン戦
これが就任2年目、井口資仁監督(44)が変更した主なキャンプ・オープン戦のスケジュールだ。キャンプ初日にいきなり”実戦”となったことにも驚いたが、他11球団にも衝撃を与えたのは2月11日にキャンプを打ち上げてしまったこと。通常、プロ野球のキャンプ期間は1カ月ほど。井口監督は半分以下で終了させてしまったのだ。
年長のプロ野球解説者がこう言う。
「キャンプ初日に紅白戦をやるのは、ある意味、指揮官として理想的とも言えます。実戦に対応できない選手が出たとすれば、その選手はオフの自主トレをさぼっていたわけですから。落合博満氏が中日の監督に就任した最初のキャンプも、初日に紅白戦を行ったはず」
日本のプロ野球を長く見てきた者とすれば、半分以下の日数でキャンプを切り上げたのは、衝撃的だった。日本的な発想だと「キャンプ=練習」。若手、中堅にとって、キャンプは技術的な向上を目指す期間であり、この間に養われた体力が長いペナントレースを戦い抜く礎になると思われてきた。
「練習不足」という意味ではないが、千葉ロッテのキャンプは、全体練習の時間が短い。ボビー・バレンタイン氏が指揮官だった時代からそんなスケジュールとなり、春季キャンプは鍛える期間ではなく、「調整」と捉えられてきた。
「チーム全体の練習が終わった後、選手が自発的に居残り練習するかどうか。やるかやらないかは本人の勝手。やらないで成績が落ちてクビになったとしても、全て自己責任ですから」(前出・同)
ひと昔前のプロ野球選手は、オフに入ると同時に「ゴルフ三昧」になっていた。しかし、近年は違う。オフも個人的にトレーナーを雇うなどして、練習を重ねている。シーズン中も、午後6時が試合開始なら、正午過ぎには球場入りして個人練習をし、その上で、午後3時過ぎから始まる全体練習もこなしている。
そういう状況から考えると、あえて全体練習のキャンプ期間を長くする必要はないとした「井口改革」は、時流に適したものなのかもしれない。
しかし、こんな指摘もあった。
「個人練習をする施設があるかどうか、です。ロッテは本拠地に帰還するまでの間、沖縄など各地を転戦します。その間、練習施設を確保できたのかどうか。試合が行われた球場内の施設を借り切って、出場予定のない選手は打撃練習をしていましたが」(スポーツ紙記者)
ピッチャーが投げるボールと、打撃マシンでは「感覚」が違う。そういう点では「練習不足」に陥るのではないかと思われる。
一般論として、キャンプ期間が1カ月あれば、シート打撃などの実戦形式の練習スケジュールを十分に組み込むことができる。キャンプ・自主練習、実戦形式のシート打撃等、そして紅白戦・対外試合へ――。井口監督は2段階目の「実戦形式のシート打撃等」を省略したのだ。
18〜19年オフ、千葉ロッテはFA宣言した丸佳浩外野手との交渉に失敗したように、目立った補強は行っていない。しかし、井口監督は試合と球場施設内での練習を並行させる独自の調整に手応えを感じているという。本拠地帰還後は練習時間も増えるだろう。
「メジャーリーグのキャンプ・スケジュールに似ていると思います。井口監督は米球界を経験し、日本式の長丁場のキャンプを変えたいと思ったのでしょう」(前出・同)
ロッテが躍進すれば、日本のプロ野球界はキャンプ・スケジュールを根底から考え直すことになるだろう。(スポーツライター・飯山満)