首相が所信表明演説で野党に逆質問を浴びせ、これを受けた野党第一党党首が代表質問で“所信表明”する。役割が全くあべこべで、党首対決までねじれ現象を起こすことになりそうだ。
民主党は29日、麻生首相の逆質問に対して一切回答しない方針を決定。小沢代表は10月1日の代表質問で、次期衆院選の民主党マニフェストを公表するという。
これを小沢氏の“所信表明”と位置付け、あえて首相には答弁を求めない。麻生氏にしてみれば、野党からの代表質問なのに質問されないわけだから、無視されることになる。政治記者は「小沢氏のほうが器も戦略立案能力も麻生氏よりはるかに上手だったということ。所信表明で威勢よくケンカを売ったのはいいが、相手が乗ってこないわけだから、麻生氏には苦しい展開になる。小沢氏は『弱い犬ほどよく吠える』と知っている」と話した。
本来であれば、首相は所信表明でこの国をどのようにしたいかという国家ビジョンを語り、野党党首はこれに対してさまざまな角度から質問をぶつけるのが筋だ。ところが小沢氏がビジョンを熱く語るという。
「立場が逆転することで国民目線には“小沢首相”が大きく見える。麻生氏は各種世論調査の党首力で小沢氏を引き離していただけに調子に乗ったのだろうが、墓穴を掘った」(前出の記者)
麻生氏は所信表明で民主党に対し「日米同盟と国連と、どう優先劣後させようとしているか、論拠とともにうかがいたい」などと質問。29日夜には記者団に「お答えをいただけると思っている」と述べた。
鳩山由紀夫幹事長は記者団に「麻生内閣には語るべき政策がないから(小沢氏が)首相に質問しても意味がない。国会の場で、麻生氏より小沢氏のほうが『首相の器』だと示す」と狙いを説明。
麻生氏は補正予算審議に野党の協力が得られなければ早期解散・総選挙もやむなし、とのスタンスを明確にしている。11月2日投開票の選挙日程はほぼ確実となった。